『地名の楽しみ』今尾恵介著
[レビュアー] 産経新聞社
全国各地の地名を題材にしたエッセー集。東武鉄道春日部(かすかべ)駅の所在地は春日部市粕壁(かすかべ)1丁目。なぜ漢字が違うのか。東村山市と東大阪市と東久留米市、同じ「東」がついても、その意味は少し違う。兵庫県宝塚市の「伊孑志(いそし)」って、手書きでは「子(こ)」と区別できないのでは…という具合。〈無形文化財にして日用品〉である地名をめぐる話は、どれも驚きと面白さに満ちている。歴史的地名を復活させる動きがある一方で、キラキラネームも増えているといい、著者は「地名は自分たちだけのものでなく、子孫たちに引き継いでいくもの」と訴える。(ちくまプリマー新書・860円+税)