『神戸、書いてどうなるのか』 安田謙一著

レビュー

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神戸、書いてどうなるのか

『神戸、書いてどうなるのか』

著者
安田謙一 [著]
出版社
ぴあ
ISBN
9784835628530
発売日
2015/11/26
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『神戸、書いてどうなるのか』 安田謙一著

[レビュアー] 長島有里枝(写真家)

 タイトルの面白さがギリギリわかる世代で嬉(うれ)しい。

 内山田洋とクールファイブの名曲「そして、神戸」の歌い出しになぞらえた本書は、ディープな神戸の観光案内であると同時に、秀逸なエッセイ集だ。

 昨年十一月から縁あって神戸に通うわたしは、滞在が合算で二週間に達した頃、この本を手に取った。グルメ、景観、文化施設などのカテゴリーをゆるい線引きで五章に分け、最後は神戸で生まれ育った著者の半生の物語で終わる。神戸全域をくまなくぶらついたであろう「ロック漫筆家」の、個人的記憶や思い入れを反映した視点が心地よい。恋人に故郷の話を聞かされ続けた結果、見ず知らずの街にすっかり詳しくなるように、いつしか自分が神戸に愛着を感じているのに気づく。

 街を歩いていて気になったレコード屋の名前を文中に見つけて嬉しくなったり、書かれていた中華料理店に行ってみたりした。初めてなのに、店構えも店員の佇(たたず)まいも味も懐かしい。神戸の話でありながら、すべての街の物語でもある。事実、失った「東京(ふるさと)」を神戸に発見して懐かしむ自分が、そこにいる。(ぴあ、1500円)

読売新聞
2016年1月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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