『花の忠臣蔵』 野口武彦著

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花の忠臣蔵

『花の忠臣蔵』

著者
野口 武彦 [著]
出版社
講談社
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784062198691
発売日
2015/12/11
価格
2,376円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『花の忠臣蔵』 野口武彦著

[レビュアー] 清水克行(日本史学者・明治大教授)

 「ソロバンのできる奴(やつ)、要領のいい奴、みんな小利口に才覚だけで立ち回る。イヤな世の中になったものです…」

 こんな愚痴を友人にこぼした男は、14年後に赤穂浪士の一人として吉良邸に討ち入ることになる。

 おりしも貨幣経済は空前の爛熟(らんじゅく)状態。カネがカネを生み、富める者はより豊かに。しかも、誰もその経済のカラクリを理解できないまま、ただ狂躁(きょうそう)が繰り広げられる。

 浅野内匠頭の刃傷(にんじょう)を国元に告げる第一報の使者の口上ですら、主君の安否よりも真っ先に赤穂藩発行の藩札の処置に言及する始末。本当に武士らしい武士は、どこへ行ってしまったのか?

 そんな中、時代の反作用として出現したのが赤穂四十七士である、というのが著者の見立てだ。元禄時代を現代社会にたとえる著作は従来もあったが、それを豊富な史料で裏づけたのが本書の真骨頂。一つ一つの史料を踏まえた逸話が面白い。

 本書の主役は大石内蔵助でも堀部安兵衛でもない。強いて言えば、社会が大きな曲がり角を迎えた「元禄」という時代がそれに当たるだろう。(講談社、2200円)

読売新聞
2016年1月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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