【写真集】『しかしか』石井陽子 街中の野生動物

レビュー

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しかしか

『しかしか』

著者
石井 陽子 [写真]
出版社
リトル・モア
ジャンル
芸術・生活/写真・工芸
ISBN
9784898154267
発売日
2015/12/14
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

【写真集】『しかしか』石井陽子 街中の野生動物

[レビュアー] 産経新聞社

 違和感が半端じゃない。野生のシカを撮った写真集なんだけど、そのシチュエーションがちっとも“自然”ではないからだ。撮影地は奈良と広島の宮島。土産物店の軒先に座り込む。車道で行列。工事現場に入りこむ。駐車場にたむろする。本来なら野生動物がいるはずもないような街中で、シカたちがしっかりちゃっかり生きている姿を眺めていると、だんだん笑えてくる。ついつい擬人化してセリフをあてたくなったり。それほど人間の生活域になじんでいるのであった。

 最近は生息数が増えたことで、各地で“害”なんて言葉を使われているシカたち。本書のような共生の風景は、シカの生態としては一般的じゃないかもしれないが、「人間と自然とのかかわり方」という意味では、じつに象徴的だ。

 巻末のコラム「しかをしる」によると、保護されている奈良公園のシカは、他のエリアのシカより約3倍も長生きするらしい。つまりこの風景、シカにとっては、生存のために当然の選択でもあるのだ。(存)

 リトルモア・1600円+税

産経新聞
2016年1月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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