健さんと文太 映画プロデューサーの仕事論 [著]日下部五朗

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健さんと文太

『健さんと文太』

著者
日下部五朗 [著]
出版社
光文社
ジャンル
芸術・生活/演劇・映画
ISBN
9784334038977
発売日
2015/12/16
価格
864円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

健さんと文太 映画プロデューサーの仕事論 [著]日下部五朗

[レビュアー] 碓井広義(上智大学文学部新聞学科教授)

 最も映画館に通ったのは70年代の学生時代だ。ただし封切りを観るのはバイト代を手にした直後のみ。普段は二番館や三番館、そして名画座が定番だった。

 おかげで小中学生の頃に公開された高倉健の任侠映画も、オールナイトの特集で観ることができた。思えば60年代の後半は『日本侠客伝』、『昭和残侠伝』、『網走番外地』という3つのシリーズが同時進行で製作されていたのだから、健さんも東映も狂気の沙汰だ。

 一方、73年に始まった『仁義なき戦い』シリーズはリアルタイムで観ている。映画館いっぱいに罵声と銃声が響き渡っていた。菅原文太は本物のやくざじゃないかと思ったものだ。

 毎回スクリーンに映し出される筆文字で、日下部五朗という、どこか凄味のある名前を覚えてしまった。こんなトンデモナイ映画ばかり作るのはどんな人かと想像していたが、やはりトンデモナイ人だったことが本書でわかる。

「プロデューサーは自分のコントロールできない監督、俳優と組んではいけない」と言う。「自分の意志が通せるかどうか」が問題なのだと。そこにあるのは、映画はプロデューサーが作るという自負と自信だ。

 こういう人物が語る高倉健や菅原文太が面白くないわけがない。「健さんが制服の男とすれば、さしずめ文太は普段着の男」などと、さらりと言ってのける。ここでは紹介できないようなエピソードが満載だ。

新潮社 週刊新潮
2016年1月28日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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