『移民からみるアメリカ外交史』 ダナ・R・ガバッチア著

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移民からみるアメリカ外交史

『移民からみるアメリカ外交史』

著者
ダナ・R・ガバッチア [著]/一政(野村) 史織 [訳]
出版社
白水社
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784560084755
発売日
2015/11/27
価格
3,456円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『移民からみるアメリカ外交史』 ダナ・R・ガバッチア著

[レビュアー] 村田晃嗣(国際政治学者・同志社大教授)

国際的な視点で説く

 アメリカは移民の国であると教えられてきた。また、第二次世界大戦に参戦するまで、アメリカは長らく孤立主義的だったとも教えられてきた(評者の場合は、教えてきた)。しかし、実際には、多くの移民が出身国と深いつながりを維持し、何度も出身国とアメリカの間を行き来していた。移民たちは越境的な(トランスナショナル)ネットワークを持ち、多くのアメリカ人も海外で様々な経済活動に深く関与していたのである。移民史と外交史の対話が必要である。移民たちが逞(たくま)しく暮らし、家族や親戚をアメリカに呼び寄せる(連鎖移民)様子をちりばめながら、本書は両者を結び合わせている。

 移民問題は連邦政府と州、行政府と議会との権限に関わる問題でもある。また、移民問題は貿易問題とも絡み合っている。連邦政府は移民を制限しながら自由貿易を推進する困難を理解していたが、議会や州はしばしば近視眼的であった。移民たちは数を頼りに地元の政治家に働きかけたが、ワシントンのエリートに味方を見つけることのほうが多かったのである。さらに、移民の増加が治安の悪化や失業の増大につながると危惧されてきたが、これが事実に反することを歴史は示している。誰をも満足させる移民制度を構築することは困難である。しかし、自由貿易がグローバルな経済統合を促進するように、移民もグローバルな社会的、経済的統合に貢献している。多くのアメリカ人は移民問題を国内問題と捉えがちだが、国際問題でもあると、本書は繰り返し説いている。

 移民問題への対応を誤れば、国際的なイメージ悪化や影響力低下にもつながる。かつて日米関係にも、日系移民の排斥問題や戦時下の日系アメリカ人の隔離問題があった。最近でも、メキシコとの国境警備を厳格化し、イスラム教徒の入国拒否を訴える大統領候補すらいる。移民問題をグローバルかつ重層的に捉える視点が、今こそ求められていよう。一政(野村)史織訳。

 ◇Donna R. Gabaccia=トロント大学歴史学教授。移民史やジェンダー、食文化などの分野で著書多数。

 白水社 3200円

読売新聞
2016年1月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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