【聞きたい。】アニメ監督・宮地昌幸さん 『さよならアリアドネ』

インタビュー

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さよならアリアドネ

『さよならアリアドネ』

著者
宮地 昌幸 [著]
出版社
早川書房
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784150312084
発売日
2015/10/22
価格
842円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

【聞きたい。】アニメ監督・宮地昌幸さん 『さよならアリアドネ』

[レビュアー] 村島有紀

【聞きたい。】宮地昌幸300
宮地昌幸さん

■離婚を機にエンタメ執筆

 涙あり、笑いありのラブコメディーだ。

 物語の舞台は、2010年から2050年の東京・吉祥寺。2010年の服部政志は、仕事も夫婦仲も順調な新進気鋭のアニメーターだが、73歳になった2050年は、妻と別れ、仕事も友人も失い人生に絶望している。そこで、全財産をはたいて派遣したのがタイムトラベル探偵、アリアドネ邦子。邦子は、2010年の政志のもとを訪れ、妻が別れを決意した「2025年8月23日」を最高の1日にするべく、政志をタイムスリップさせ、未来の“予行演習”をさせることにする。

 執筆のきっかけは、6年前の離婚。10年近く連れ添った妻から別離を切り出された。理由の一つは、自分が仕事に没頭しすぎたこと。初監督作品の『亡念のザムド』に「命をかけ」、家に帰るのは3日に1度、シャワーを浴びて洋服を着替えるとそのまま、仕事場に戻り、床で寝た。

 「もともと女性は苦手。自己実現を大事にしていたから恋愛にも興味がなかった。さっさと結婚してしまえば、あとは悩むことがないと思っていた。妻から三くだり半を突きつけられ、初めて女性の心理について考え、恋愛ドラマや映画を見まくった」

 アリアドネは、テセウスに糸を渡し、迷宮からの脱出を手助けしたギリシャ神話上の女神。アリアドネ邦子は、女神とはほど遠い、鈍くさい中年女性だが、どこかかわいらしく、放っておけないというキャラクター。邦子には自身の母親像も反映されたという。

 「離婚を機に、その反省を込めた中高年の恋愛っていうと、すごく暗くなっちゃうでしょ? タイムスリップものにするとエンタメになると思った。人生は難しい。だけど、書くことで癒やされた」

 夢追い型の友達夫婦の危機を救う、ためになる物語だ。(村島有紀)

                   ◇

【プロフィル】宮地昌幸

 みやじ・まさゆき 昭和51年、神奈川県生まれ。平成11年、スタジオジブリに入社し『千と千尋の神隠し』で宮崎駿監督の助手を務め、13年独立。監督・演出作品多数。著書に『新訳 亡念のザムド』。

産経新聞
2016年1月31日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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