あの国民的ベストセラーが、28年ぶりにシリーズ復活! 〈インタビュー〉赤川次郎『セーラー服と機関銃3 疾走』

インタビュー

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セーラー服と機関銃3 疾走

『セーラー服と機関銃3 疾走』

著者
赤川 次郎 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784041034552
発売日
2016/01/23
価格
648円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

インタビュー 赤川次郎『セーラー服と機関銃3 疾走』

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 一九七六年に「幽霊列車」でオール讀物推理小説新人賞を受賞してから四十年。オリジナル著書が六百冊に迫ろうとしている赤川次郎さん。
 なかでも一九七八年に刊行された『セーラー服と機関銃』は、紛れもない代表作ですが、待望の第三作が刊行されたのを機に、このシリーズについてお話を伺いました。

■まずタイトルから

――刊行順としては赤川作品の七冊目の著書となった『セーラー服と機関銃』、タイトルを先に思いつかれたとのことですが?

赤川 「幽霊列車」でデビューする前、公募でテレビドラマの「非情のライセンス」にシナリオが採用されたことがあるんですが、その番組を担当されていた東映のプロデューサーの方から、「絶対つながらないものを二つ合わせると、面白いタイトルができるよ」と言われて、「ああ、なるほど」と思ったんです。『セーラー服と機関銃』は作家専業になって最初の書き下ろし長編だったんですが、依頼された時にそんなことを思い出していたら、なんだか語呂がいいなって、『セーラー服と機関銃』が(笑)。

――確かにまったく異質の組み合わせですね。

赤川 そうしたら、セーラー服の女の子が、機関銃を持っている場面がフッと思い浮かんだ。あっ、これはけっこう魅力的かなと思ったんです。最後にともかく、セーラー服の女の子に、機関銃を撃たせよう。そのラストに向かって、どういう話にすればいいのか。そんな感じで書いていきましたね。とにかくその二つを結びつけなくてはいけないと(笑)。

――高校二年生、十七歳の星泉(ほしいずみ)が、ひょんなことから、組員がたった四人しかいない目高組の組長になって、抗争に巻き込まれていく。当時としてはじつに斬新な発端のミステリーでした。

赤川 ただ、デビュー作の「幽霊列車」とかその翌年に書き下ろした『マリオネットの罠』で、本格ミステリーのファンから〈新しい書き手〉としてけっこう期待されていたんですが、『セーラー服と機関銃』なんてタイトルの作品を書いたものだから、驚かれてしまいました(笑)。こちらとしては、別に創作姿勢が変わったわけではなかったんですけれど。

――星泉を支える同級生のなかに、ちゃんと名探偵がいて、謎解きもきっちりしていたのですが、やはりタイトルが衝撃的すぎましたね。刊行から三年後、一九八一年の暮れに、『セーラー服と機関銃』は薬師丸ひろ子さん主演で映画化され、大ヒットしました。

赤川 自作の初めての映画化でしたね。そして、初めて百万部を突破した作品でもありました。
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■待望のシリーズ第三作

――『セーラー服と機関銃』から八年半ほど後に刊行されたシリーズ二作目の『セーラー服と機関銃・その後―卒業―』では、星泉は十八歳、高校三年生になっていました。再び組長として、地上げにまつわるトラブルに悩まされていた町を救っています。そして今回、二十数年ぶりにシリーズ第三作『セーラー服と機関銃3 疾走』が刊行され、橋本環奈さんが主演の映画『セーラー服と機関銃 ‐卒業‐』が公開されるといったように、改めてシリーズとして注目されていますね。

赤川 第一作からもう四十年近く経っているわけですから、『セーラー服と機関銃3 疾走』でそのまま星泉を出すわけにもいかない。彼女が十八歳ぐらいで登場しても、あまりに環境が変わりすぎていますから、なかなか難しいと思ったんです。それで娘の星叶が主人公という設定にしました。ただ、星泉がどういう大人になったのか、作者が言うのもおかしいんですが、そのへんの興味もありましたから、ちゃんと彼女も出てきます。

――もちろん、〈セーラー服〉と〈機関銃〉という、異色の組み合わせは変えられませんね。

赤川 そうです、どこかで機関銃を撃たせなくてはいけない。まあ、普通の人は機関銃を撃つなんてことありえませんからね、どう考えても(笑)。

――星叶は十七歳。独り暮らしをしていますが、ごくごく普通の高校生です。

赤川 四十年近く前の十七歳と今の十七歳とでは、ずいぶん違うのかもしれないけれど、僕の意識としてはあまり変わらないんです。女の子が成長していく過程としては、昔も今も、それほど違わないと思っています。僕の勝手なイメージかもしれないんですが。だいたい今、身近に十七歳の女子はいませんから(笑)。今の十七歳の会話なんて、まったく理解できないかもしれませんね。

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■はたして星泉の〈今〉は?

――そしてもちろん、その叶の母である星泉がどういう形で登場するかは、興味の尽きないところです。

赤川 ともかく親子の話にしようとは思っていましたけれど、これも最初に『セーラー服と機関銃3 疾走』というタイトルが決まっていて。あまり疾走してないですね、結局は(笑)。作者自身、星泉がどういうふうになっているのか、楽しんでいるところがありました。「多分、星泉だったら、こういう大人になってるだろうな」なんて考えながら書いていくのが、じつに面白かったんです。

――読者としても、星泉が平凡な主婦になっているなんて、誰も考えないでしょうね。

赤川 それから、泉と叶は、どう性格が違うかとか、そういうことも考えましたね。娘のほうは、母親ほど何でもかんでも無鉄砲に飛び込まない(笑)。できたら静かに暮らしていたい、そんなタイプなんです。けれども、いざとなったら、黙ってはいられない……そのへんは母親と似ているんですね。

――一作目はヤクザの抗争、二作目はバブル景気、そして三作目は政治がらみの国際的な事件と、だんだんスケールアップしています。

赤川 星泉がヨーロッパで働いている時に、ある事件に巻き込まれた。そこからスタートしたストーリーになっています。あくまでも泉と叶という親子のストーリーからはみ出さないようにはしましたが、時代を多少反映させたいなというところもありましたね。

■驚きの映画化

――薬師丸ひろ子さん主演の映画『セーラー服と機関銃』を改めて観たのですが、意外に機関銃を撃つシーンは地味でした。

赤川 ほんの数秒ですね。大体、十七歳の女の子に、機関銃を撃たせるなんて無理。現実にそんなものを撃ったら、引っくり返っちゃうでしょう(笑)。そもそも持てないかもしれない。相当重たいですからね、機関銃は。鉄の塊でしょう。でも、機関銃だからインパクトがあるので。

――映画はやはり反響が大きかったですか?

赤川 そうですね。僕の作品の読者層が小学生ぐらいにまで広がったのは、あの映画からではないでしょうか。もっとも、映画そのものはあまり、子ども向きではないんですが。

――ちょっと小学生には刺激的なシーンもありました(笑)。

赤川 試写で観たときは、もうビックリしました。あまりに想像していたのとは違うので(笑)。公開してあんなにお客が入るとは思わなかった。本当に、誰も想像しなかったんじゃないかなあ。アイドルの薬師丸ひろ子さんがヒロインですから、もうちょっと軽快な、青春映画っぽくなるのかなと思っていたんですね。そうしたら、完全に相米慎二監督の世界。ワンカットが七分も八分もあったりするような映画になるとは思いもしなかった。アイドル映画なのに、主役の顔がよく見えないシーンが多い(笑)。

■映画ならではの『セーラー福と機関銃』

――たしかに、ビルの屋上で目高組の看板を燃やしてしまうシーンなどは、あまりに遠くから撮っているので、誰が演じているのかよく分かりませんでした。

赤川 でも、薬師丸ひろ子さんが本当に生き生きとしていた。やはり相米監督の力ですね。彼女の魅力をうまく引き出していました。相米監督じゃなかったら、あんな映画には絶対ならなかったでしょう。新鮮でした。相米監督の初監督作品『翔んだカップル』にも薬師丸さんは出演していますが、そうとう相米監督に鍛えられたのでしょうね。役者にとって、いい監督と巡り会うかどうかが、ひとつの分かれ道になります。薬師丸さんの場合は、相米さんと、『Wの悲劇』で澤井信一郎さんに出会ったのが、やはり大きいですね。役者の魅力を引き出すのは、監督の力ですから。

――演技もさることながら、薬師丸さんが歌う主題歌もじつに印象的ではないでしょうか?

赤川 初めて聞いたときに、本当にうまいなあと思ってビックリしました。試写のとき、一緒に観ていた薬師丸さんに、「歌、上手だね」と言ったのを今でも覚えてます。彼女は合唱部にいたそうですが、普通、あんなに上手く歌えるとは思わないですからね、アイドルが。

■新しい星泉が登場

――そして、角川映画四十周年記念作品として、『セーラー服と機関銃 ‐卒業‐』 が二〇一六年三月に公開されます。福岡県を拠点に活動するアイドルグループ「Rev. from DVL」のメンバーで、千年に一人の逸材とも言われている橋本環奈さんが、星泉を演じています。

赤川 劇中での星泉は十八歳ですが、学校の夏休み中に撮影していた時、彼女はまだ十六歳だったんです。ドラマの経験はあまりないと思うんですけれど、本当に頑張っていましたね。体当たりでやっていたと思います。最初はまだ子どもっぽかったのが、撮影していくうちにだんだん大人になって、きれいになっていく。そういう時期を、ちゃんと映画という形で残せるというのは、ある意味、幸運だと思います。

――あの主題歌ももちろん歌われていますね?

赤川 そうそう、やっぱりあの歌のイメージも大きいですから。でも、せっかく橋本さんが記者会見の中で、「今、夢の途中にいます」みたいなことをわざわざ言ったのに、取材陣にはウケなかった(笑)。歌は上手ですよ。彼女にとってこの映画が、キャリアの中でステップアップする材料になってくれればいいなと思います。

――待望のシリーズ第三作『セーラー服と機関銃3 疾走』と、久しぶりの映画化。〈セーラー服〉と〈機関銃〉という思いもよらない組み合わせから紡がれてきた世界が、新たな展開を見せています。きっとまた、たくさんの読者を楽しませてくれることと思います。

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赤川次郎(あかがわ・じろう)
1948年福岡県生まれ。76年、「幽霊列車」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。78年に発表した『セーラー服と機関銃』は映像化もされ、大ベストセラーに。80年、『悪妻に捧げるレクイエム』で角川小説賞を、2005年、日本ミステリー文学大賞を受賞。「三毛猫ホームズ」シリーズ、「花嫁」シリーズなど著書は580冊を突破。

取材・文|山前 譲  撮影|ホンゴユウジ

KADOKAWA 本の旅人
2016年2月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

KADOKAWA

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