『いつかリーダーになる君たちへ』 安部敏樹著

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いつかリーダーになる君たちへ 東大人気講義チームビルディングのレッスン

『いつかリーダーになる君たちへ 東大人気講義チームビルディングのレッスン』

著者
安部 敏樹 [著]/坂口 菊恵 [監修]
出版社
日経BP
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784822251260
発売日
2015/12/12
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『いつかリーダーになる君たちへ』 安部敏樹著

[レビュアー] 柳川範之(経済学者・東京大学教授)

チームつくる力を重視

 グローバル化がますます進み、そして人間の仕事がコンピュータにとって代わられるとも言われる時代。これから、一体どんな教育をしていけばよいのだろう。そんな疑問をもっている人にお薦めしたいのが、本書。東大の教養学部で行われたゼミが基になっている。

 著者は、このゼミを担当した若き起業家。社会問題をビジネスの発想を用いて解決しようとするソーシャルビジネスの実践家であり、そのためのノウハウを学術的に検討している研究者でもある。

 この本で重視されているのは、何人かのグループをまとめあげていくチームビルディング力と課題設定力だ。チームをつくるというと、一緒にいれば自然にできるとか、体育会にいればできる、と考える人がいるかもしれない。しかし、この本で考えているのは、それとは少し違って、見知らぬ人同士を、会議や議論を通して短時間でまとめ上げていく力だ。

 これこそが、様々な国や文化の人たちと力を合わせ、コンピュータに負けない成果を発揮するために必要な能力だからなのだろう。そしてそれは今までの日本人が比較的苦手としてきた能力でもある。

 本書が特徴的なのは、それらの能力を身に着けるために、具体的にどうしたらよいかという方法論が書かれている点だ。話し合いの前に確認すべきポイント等、社会人に役立つメソッドも多い。実際のゼミでのやりとりが再現されていて、学生の戸惑い等も含めて臨場感のある紹介が行われている。

 本書はたくさんの知識が詰まっていて、それを覚えるという類の本ではない。そのため、これが学問かと戸惑う人もいるかもしれない。しかし、これこそが今後求められる教育の一つの形なのだろう。知識を詰め込むのではなく、人と積極的にかかわるすべを考える。新しい教育のあり方を、深く考えるきっかけになる本だ。

 ◇あべ・としき=1987年生まれ。一般社団法人リディラバ代表。東大大学院で脳と社会の相互作用を研究。

 日経BP社 1400円

 

読売新聞
2016年1月31日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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