『微生物が地球をつくった』 ポール・G・フォーコウスキー著

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微生物が地球をつくった

『微生物が地球をつくった』

著者
ポール・G・フォーコウスキー [著]/松浦俊輔 [訳]
出版社
青土社
ジャンル
自然科学/生物学
ISBN
9784791768929
発売日
2015/10/23
価格
2,484円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『微生物が地球をつくった』 ポール・G・フォーコウスキー著

[レビュアー] 柴田文隆(読売新聞社編集委員)

コア遺伝子の保管人

 生命誕生から40億年。地球生命はこの間、5回ほどの大量絶滅をくぐり抜けて来た。有名なのは恐竜を絶滅させた6550万年前の隕石(いんせき)衝突だろう。地上も海も厚い氷に覆われた全球凍結の大ピンチに見舞われたこともある。過去に地球に出現した種のほとんどはこうした危機に直面し滅びているが、実はこうした「種の絞り込み」は、新たな爆発的進化の原動力でもあった。

 繁栄を謳歌(おうか)しているわれわれ人類も、次の地球激変(原因は気候変動、小天体衝突、核戦争などいろいろ考えられる)によって滅亡する恐れはある。もちろんそんな事態は人類の英知によって回避してほしいと願うが、本書を読めば、「それでも微生物は残る。地球生命は不滅」という悟りのような境地に達する。

 微生物は動物が登場する20億年以上も前から地球上に存在し、生き延びてきた。微生物の中では、地球上のあらゆる生き物が生き続けるために不可欠な中核システムが進化し、引き継がれてきた。中核システムとは呼吸、たんぱく質合成、細胞が生きるために使うエネルギーを放出するアデノシン三リン酸(ATP)生産などの機構だ。これらの合成に必要な「コア遺伝子」は1500個ほどだが、それらは今も「すべて、微生物にある」。

 コア遺伝子が喪失、変異してしまったらその生物は滅亡するしかない。地球上にほとんど無数に存在する微生物こそはコア遺伝子の保管人であり、地球が全ての生物にとって住みやすいよう環境を整備してきた良き管理人であった。著者は言う。「微生物がいなかったら、私たちもここにはいないだろう」

 創世記によると、神は堕落した世界を滅ぼすことにし、動物や鳥、地の上に這(は)う全てのものから雌雄をペアで選んで方舟(はこぶね)に乗せるようノアに命じた。顕微鏡を知らない彼の乗客名簿に微生物の名はなかったが読者は、微生物こそが「方舟」だったことを知る。松浦俊輔訳。

 ◇Paul G.Falkowski=米ラトガース大学地質科学・海洋沿岸科学科教授。

 青土社 2300円

読売新聞
2016年1月31日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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