『国道者』 佐藤健太郎著

レビュー

12
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国道者

『国道者』

著者
佐藤 健太郎 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784103397311
発売日
2015/11/27
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『国道者』 佐藤健太郎著

[レビュアー] 稲泉連(ノンフィクションライター)

 世の中には様々な趣味があれど、「国道めぐり」はマニアックな部類だろう。著者は20年弱で32万キロを走破し、「国道マニア」を自認するサイエンスライターである。

 まずは軽い気持ちで試しに読んでみると、これが面白い。実に軽妙なルポエッセイで、次、またその次、とページをめくってしまう。

 網走監獄のルーツとなった国道333号、名前からして不穏な「暗(くらがり)峠」、今ではちょっとした観光名所の階段国道。地域や行政、政治家の表も裏もある思惑や事情が絡み合い、生み出された珍道変道に呆(あき)れたり、頬が緩んだり。そうならざるを得なかった、という日本の国土の過酷さも分かる。開かずの踏切に怒る吉田茂、高速道を削り取った河野一郎などの面々が、地図に残した痕跡も興味深い。

 なるほど、道を描くこととは、人々の営みを描くこと。「国道者」たる著者は権力者に翻弄された道の運命に自らの人生をも重ね、海に消えゆく国道を前に哀愁を漂わせる。溢(あふ)れ出さんばかりの対象への愛に誘われるうち、いつの間にか未知なる世界が垣間見えた気がした。

 新潮社 1300円

読売新聞
2016年1月31日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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