『カドモスとハルモニアの結婚』 ロベルト・カラッソ著

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カドモスとハルモニアの結婚

『カドモスとハルモニアの結婚』

著者
ロベルト・カラッソ [著]/東 暑子 [監修]
出版社
河出書房新社
ジャンル
哲学・宗教・心理学/哲学
ISBN
9784309230962
発売日
2015/11/27
価格
5,940円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『カドモスとハルモニアの結婚』 ロベルト・カラッソ著

[レビュアー] 出口治明(ライフネット生命保険会長)

 ヨーロッパの文化の基層にはキリスト教ではなくギリシャの神々が潜んでいる、美術館や博物館を訪れる度にそう感じてきた。ギリシャの神々が人間の霊感を呼び覚ました例は、オウィディウスからサルトル、ジョイスに至るまで枚挙に暇(いとま)がない。そして、カラッソが素晴らしい筆遣いでこの隊列に加わったのだ。

 本書は、オリュンポスの12神と同じく12章から成る。1章はシドンの浜辺で牡牛(おうし)ゼウスがエウロペを背に乗せるシーンから始まる。12章は、老王アゲノルがカドモスなど息子たちに妹エウロペの探索を命じ、カドモスが彷徨(ほうこう)の末にテバイを建設してハルモニアと結婚し神々もその宴(うたげ)に参加、そして老いた2人がアルファベットをギリシアに贈り、背中を結い合わされて結ばれた一体の蛇となって去っていくシーンで終わる。

 この間に、イリアス、オデュッセイアやオイディプス、イアソンなどお馴染(なじ)みの物語が絶妙にミックスされて、手慣れた語り口でつづられるのだ。カラッソは異説や憑依(ひょうい)に重きを置き、神々の物語を見事に再構成した1冊を世に送り出した。東暑子訳。

 河出書房新社 5500円

読売新聞
2016年1月31日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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