『危機と決断 上・下』 ベン・バーナンキ著

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危機と決断 (上) 前FRB議長ベン・バーナンキ回顧録

『危機と決断 (上) 前FRB議長ベン・バーナンキ回顧録』

著者
ベン・バーナンキ [著]/小此木 潔 [監修]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784041023655
発売日
2015/12/24
価格
2,052円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

危機と決断 (下) 前FRB議長ベン・バーナンキ回顧録

『危機と決断 (下) 前FRB議長ベン・バーナンキ回顧録』

著者
ベン・バーナンキ [著]/小此木 潔 [監修]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784041023662
発売日
2015/12/24
価格
2,052円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『危機と決断 上・下』 ベン・バーナンキ著

[レビュアー] 柳川範之(経済学者・東京大学教授)

プロであるが故の苦悩

 あの時、世界はまさに危機に直面していた。日本ではリーマンショックと呼ばれているあの経済危機の時、世界の誰よりも重い責任を背負って、問題解決に取り組んでいたのが、この人バーナンキ前FRB議長である。彼が政策を一歩間違えば、世界がもっとひどい奈落の底に落ちても、まったく不思議ではなかった。

 世界恐慌の権威であった著者が、金融政策の舵(かじ)取りを担っていたのは、歴史の偶然とはいえ、我々にとって大きな幸運であった。と、多くの人は思っていた。しかし、本書を読むと、むしろプロであるが故の苦悩が伝わってくる。考えてみれば、危機研究のプロとはいえ、危機対応の実務経験等はなかったのだ。刻々と事態が悪化していくなか、手探りに近い形で政策がとられていった。

 政治的な立場にいた人物の回顧録を、すべて真実と受け止めることは危険だ。本書とて、その例外ではあるまい。しかし、大幅に割り引いて考えたとしても、本書の内容は、後世に残る貴重な歴史的資料だろう。リーマン・ブラザーズを救済しようと苦闘しながら、結局は十分な手立てがなく、破たんに追い込まれていく様子も克明に記述されている。

 研究者らしい解説も出てくるし、金融の専門用語もちらほら出てきて、一般読者にはやや難解な面もあるかもしれない。しかし、そんな細かいところは飛ばして、純粋にアメリカ政治の裏側を知るつもりで読んでも十分楽しめる内容になっている。なんといっても、ブッシュ、オバマ両大統領時代を経験した議長なのだから。

 彼の政策に対しては肯定的な評価ばかりではない。最終的な評価は歴史に委ねられるべきだろう。とられた政策は、ほとんどの部分現在継続中である。その点を考えると、今後のアメリカの経済や金融政策がどうなっていくのか、それを考えるうえで有益な鍵も、本書のあちこちから見つかるに違いない。小此木潔他訳。

 ◇Ben S. Bernanke=1953年生まれ。経済学者。米連邦準備制度理事会(FRB)第14代議長。

 KADOKAWA 各1900円

読売新聞
2016年2月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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