【聞きたい。】都築響一さん 『圏外編集者』

インタビュー

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圏外編集者

『圏外編集者』

著者
都築響一 [著]
出版社
朝日出版社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784255008943
発売日
2015/12/05
価格
1,782円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

【聞きたい。】都築響一さん 『圏外編集者』

[レビュアー] 黒沢綾子

【聞きたい。】都築響一さん300
都築響一さん

■スマホに出ない「面白さ」

 珍スポット、スナック、独居老人に地方発ラッパー…。日本各地、いや世界中に存在するのに、既存メディアが長い間見過ごしてきたものたち。それらにいち早く着目し、独自の視点で現代社会を切り取ってきた孤高の編集者が、本作りの裏側を語り下ろした。

 「POPEYE」「BRUTUS」という若者憧れの雑誌でキャリアをスタートさせながら、フリー編集者として追求したのは「リアル」と「ふつうにあるもの」だ。バブル期のドラマのような世界でなく、東京の片隅にある狭いながらも独創的な若者の部屋を撮影した『TOKYO STYLE』は、地方の学生に希望を与えた。代表作『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』も、自らの目線で面白いと感じた地方の名所が詰まっている。秘宝館のように「いま記録しないとなくなってしまう」スポットも多い。

 「日本の9割は『地方』。テレビや雑誌だけ見てると、若い子は劣等感を持ってしまう。『ここには何もない』と」。国内外を旅する日々だが、検索で出てくる情報の後追いではなく、「皆のスマートフォンに出てこないところで、面白いことが起きている」。「圏外」とは編集者としての、精神的なありようを指している。

 編集に「術」なんてない、という。「重要なのは、この本を作りたいという思いの強さだけ」。出版業界は雑誌の数も部数もページ数も右肩下がり。「書きたいことはたくさんあるけれど、書く場がない」。試行錯誤する中で、自ら有料メールマガジンを主宰し、発信し続けている。

 誰もがスマホで写真や動画を撮り、記事を書いて発表できる今、「プロ」は生き残れるのか。「センスと情熱でしか勝負できない。経験だけがあるベテランはどうにもならない。僕の場合は『量』かな。発信のペース、フットワークや会う人の多さしか、今のところ答えがないですね」(朝日出版社・1650円+税) 

 黒沢綾子

                   ◇

【プロフィル】都築響一 

 つづき・きょういち 昭和31年、東京生まれ。平成9年に『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』で木村伊兵衛賞。

産経新聞
2016年2月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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