『決戦!本能寺』 伊東潤、矢野隆、天野純希、宮本昌孝、木下昌輝、葉室麟、冲方丁著

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決戦!本能寺

『決戦!本能寺』

著者
葉室 麟 [著]/冲方 丁 [著]/伊東 潤 [著]/宮本 昌孝 [著]/天野 純希 [著]/矢野 隆 [著]/木下 昌輝 [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784062198035
発売日
2015/11/18
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『決戦!本能寺』 伊東潤、矢野隆、天野純希、宮本昌孝、木下昌輝、葉室麟、冲方丁著

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

舞台裏もまさに合戦

 書き下ろし競作アンソロジー『決戦!』シリーズの第三弾である。第一弾『関ヶ原』、第二弾『大坂城』に続き、今回のお題は本能寺の変。「葉室麟・斎藤利三」「伊東潤・織田信房」等と一作家が一人物を担当し、多様な視点から戦国時代前半のハイライトであるこの大事件を描き出してゆく。メインの人物だけでなく、影の主役・信長の描き方にも、個々の作者の戦国史観が垣間見えるところがいっそう面白い。

 このシリーズは、第四弾『決戦! 三國志』まで刊行中。円熟のベテランから書き盛りの中堅どころ、ピッカピカの新鋭まで、歴史時代小説の世界で注目される作家たちを集めた豪華なラインナップだ。シリーズ累計七万部を突破しているというからお見事です。

 競作アンソロジーをつくるのは難しい。まず面子(メンツ)を揃(そろ)える段階で、希望する作家にスケジュールをとってもらうのが大変だ。特定のテーマや構成に縛りがあると、さらに調整が厳しくなる。作家側にとっても、短編は切れ味勝負で出来不出来がはっきり見えてしまうから、書き下ろし競作はスリリングなチャレンジだ。「いっちょうやったるで!」と逸(はや)る反面、「自分の作品だけ今イチだったら嫌だな」と思うのも人の情。いつでもほいほい引き受けられるわけではないんです。また、この『決戦!』シリーズは編集部主導で編まれていて、看板になる編者がいない。これまたけっこうな冒険である。普通は強力な編者が一人いて、舵(かじ)取りをするものだ。それがなくても続いているのは、多士済々な参加作家たちが良い意味で張り合っていて、士気が高いからだろう。舞台裏もまさに合戦なのだ。

 いろいろな点で奇跡的にハッピーなこのシリーズ、第五弾は五月刊行予定の『決戦! 川中島』。一月末締切で、一般からも作品の投稿を募った。ここから、あっと驚く新星が登場するかもしれない。既刊の参加者は男性作家ばかりだ。姫武者の参戦はあるかな?

 ◇本書で主人公となる他の人物は、森乱(蘭)丸、島井宗室、細川幽斎、明智光秀、徳川家康。

 講談社 1600円

読売新聞
2016年2月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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