『家族幻想 ―「ひきこもり」から問う』 杉山春著

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家族幻想

『家族幻想』

著者
杉山 春 [著]
出版社
筑摩書房
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784480068699
発売日
2016/01/06
価格
864円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『家族幻想 ―「ひきこもり」から問う』 杉山春著

[レビュアー] 安藤宏(国文学者・東京大教授)

 「ひきこもり」に関する永年の取材体験をもとに書かれた、力作ノンフィクション。「ひきこもり」は社会への適合能力の欠如ゆえに起こるのではない。逆に、周囲の価値観、自身への期待を過度に内面化してしまい、それをまじめに履行しようとするがゆえに、不調和を人よりも強く感じ取り、不適合を引き起こしてしまうのだという。

 いつの時代でも親は自身の人生訓を規範として子に伝達しようとし、またそれが子供への愛情であると考える。しかし現代の核家族にあって、家庭はすでに社会の流動化に対処していくフレキシビリティを失ってしまっている。そこではもはや、異なる価値が併存していくことはむずかしい。特殊な閉鎖空間と化した家庭の中で、子は押しつけられた規範を忠実に実践しようとひたすら努めてしまう。

 著者自身の体験も含め、本書で紹介される数々の事例はあまりにもシリアスだ。「家族の絆」は、もはや神話にすぎないのだろうか。著者は説く。我が子に「他者」を感じることこそが、子を社会に繋(つな)ぐ最良の手立てに他ならないのだと。

 ちくま新書 800円

読売新聞
2016年2月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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