『居酒屋の戦後史』 橋本健二著

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居酒屋の戦後史

『居酒屋の戦後史』

著者
橋本 健二 [著]
出版社
祥伝社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784396114503
発売日
2015/12/02
価格
886円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『居酒屋の戦後史』 橋本健二著

[レビュアー] 高野ムツオ(俳人)

 タイトルから、まず脳裏に浮かんだのは植木等の「スーダラ節」。この歌は高度経済成長期の平和で豊かな中流社会の到来を強く印象づけた。

 本書は終戦前後から今日に至るまでの都市における居酒屋や酒の変遷について具体的に解説したものだ。前半では、戦後の新聞記事、坂口安吾らの文人日記、徳川夢声などの芸能人の言動などを紹介しながら、往時の庶民と酒との関わりを生き生きと伝えてくれる。そして、高見順が飽食の果てに良心の呵責(かしゃく)に苛(さいな)まれたことに触れて「戦争は、苛烈な不平等を生み出した。戦後日本は、格差社会として始まった」と説く。つまり、戦後から現代までの貧富や格差の構造へ迫る日本の階級社会文化論でもある。高度経済成長の末期は経済格差がもっとも小さくなっていた。しかし、今日、社会の格差拡大は進む一方である。それは低所得者から酒文化を奪うことへと繋(つな)がり、ひいては社会そのものの危機へ陥ると著者は訴える。戦後の焼跡で、居酒屋のカストリが明日への活力を生む大きな役目を果たしていたことを念頭にするとき、この主張は確かな説得力で迫ってくる。

 祥伝社新書 820円

読売新聞
2016年2月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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