『都市をたたむ』 饗庭伸著

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都市をたたむ

『都市をたたむ』

著者
饗庭 伸 [著]
出版社
花伝社
ジャンル
工学工業/建築
ISBN
9784763407627
発売日
2015/12/10
価格
1,836円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『都市をたたむ』 饗庭伸著

[レビュアー] 牧原出(政治学者・東京大教授)

人口減に合わせて縮小

 人口減の中、日本の都市はどうなるのだろうか。現在私たちは都市を維持するために生活させられてはいないだろうか。住民が主体的に都市を使いながら縮小させるべきだ、それが本書の主張である。標語は「都市をたたむ」。風呂敷をたたむように都市の規模を小さくすることを指す。だが、たたむのは、もう一度広げて使うためでもある。将来都市の規模を再び広げる余地もあるという意味が、ここにはこめられている。

 未来の日本を見つめる著者は、絶望に陥る必要はないと諄々(じゅんじゅん)と説く。かつては人口増のもとで、中心から郊外へと都市はスプロール的に拡大した。それでも高度経済成長後の都市は、区画整理により住宅流通を発達させ、密集居住区であるスラム街を形成せず人口拡大に対応しえた。

 では人口減では、いかなる都市計画が可能なのだろうか。人口増は予測困難な急拡大であったが、人口減はゆっくりと進む現象であり、そこでは確実に将来人口を予測できる。計画による制御は容易なのである。

 ただし、いまだ私たちは人口増の発想に無意識にとらわれている。思考の前提を一つ一つ組み替えなければならないと著者は言う。人口減の中、中心地でも郊外でも、細分化された区画上の住宅がそれぞれの事情でいつの間にか空き家になる。「スポンジ化」し、すかすかになるのだ。「コンパクトシティ」と呼ばれる都市計画のように、都市の区域を中心地に縮減し、そこに集中的にインフラ投資を行う手法では対応できない。地区ごとに住民とともにどのような機能が必要か考え、空いたスペースを再利用するよう関係者に働きかけなければならないというのである。

 実に繊細なまちづくりの手法だ。担い手には鋭敏な言語感覚と、衰退を成熟へと読みかえる強靱(きょうじん)な意志が欠かせない。そのときスポンジ化した地区でのあるべき住民の生活が、都市計画の中ににじんでいくのだ。そんな未来の町に住んでみたい、本書の読了後、人はそう思うだろう。

 ◇あいば・しん=1971年、兵庫県生まれ。首都大学東京准教授。専門は都市計画・まちづくり。

 花伝社 1700円

読売新聞
2016年2月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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