『ボッティチェリ《プリマヴェラ》の謎』 クリストフ・ポンセ著

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ボッティチェリ《プリマヴェラ》の謎

『ボッティチェリ《プリマヴェラ》の謎』

著者
クリストフ・ポンセ [著]/ヒロ・ヒライ [監修]/豊岡 愛美 [訳]
出版社
勁草書房
ジャンル
芸術・生活/絵画・彫刻
ISBN
9784326800575
発売日
2016/01/21
価格
2,808円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『ボッティチェリ《プリマヴェラ》の謎』 クリストフ・ポンセ著

[レビュアー] 出口治明(ライフネット生命保険会長)

 ボッティチェリの描いた乙女が、中学生の僕のおそらく初恋の相手だった。美術全集を観(み)ることが好きになったのはそれからだったし、旅を始めたのも美術館に惹(ひ)かれてのことだった。そのボッティチェリの代表作、プリマヴェラの謎解きに挑んだのが本書だ。

 鍵を握るのはマルセイユ版のタロット「恋人」のカード。プリマヴェラの細部が美しいカラー写真で順次切り取られ、軽妙な文章が知の迷路を流れるように結論へと導いていく。この絵は、メディチ家の御曹司ロレンツォが憧れたルクレツィアとシモネッタという2人の令嬢を描いたものだったのかと腹に落ちる。

 もちろん他の解釈も可能だとは思うが、ロレンツォの自伝やサロンの常連であったフィチーノなど同時代の文献を渉猟してルネサンスの詩情溢(あふ)れる世界を再現した本書に耽溺(たんでき)することは知の快楽に他ならない。豊岡愛美訳。(勁草書房、2600円)

読売新聞
2016年2月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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