〈人間であることの哀しみと喜びとを見詰め、人間になるために励まし合って問い続けて行く〉。大阪・東心斎橋の教会がその礼拝堂を開放した「島之内小劇場」が関西小劇場史の始まりだった。その創設者の言葉を、著者は「演劇の社会的意義をひと言で表現した一文」と評している。関西各地の新旧劇場の解説、さまざまな演劇賞の受賞作や受賞俳優の紹介、あるいは劇評、制作現場のルポといった演劇評論家の仕事を通じて30年の地域文化史が描かれる。形態も状況も変わっていく。ただ、いつだって演劇は〈何らかの生きる力をくれる〉。同感です。(晩成書房・3000円+税)
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2016年2月28日 掲載
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