『巨人軍の巨人 馬場正平』 広尾晃著

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巨人軍の巨人 馬場正平

『巨人軍の巨人 馬場正平』

著者
広尾 晃 [著]
出版社
イースト・プレス
ISBN
9784781613727
価格
2,000円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『巨人軍の巨人 馬場正平』 広尾晃著

[レビュアー] 岡ノ谷一夫(生物心理学者・東京大教授)

プロレス以前の素顔

 今の大学生で馬場正平を知るものはほとんどいない。しかし、ジャイアント馬場であれば、7割以上の学生が知っている。やや安心した。本書は、正平がジャイアント馬場というプロレスラーになる以前のことを、故郷や生い立ちも含め、資料として年表や野球選手としての対戦成績もつけた貴重な本である。ジャイアント馬場前史であり、正平を通した昭和史でもある。

 本書は入念な取材により、巷間(こうかん)の馬場正平伝説のいくつかを否定する。祖父母が大きかったため、隔世遺伝で巨大化した、風呂場で頭を打ってから身長が伸び始めた、自分の巨人症が遺伝するのを恐れて子供をつくらなかった。これらはそもそも相互に矛盾しているが、すべて嘘(うそ)である。正平は小学校入学時には小さい少年であったが、3、4年生になると急激に背が伸び始めた。「大男、総身に知恵が回りかね」などと言われていた時代である。それでも正平は人気者であった。後のプロレス経営者としての才覚がすでに現れていたのだろう。しかし、高校1年のとき、正平はモルモン教に入信している。自分の体についての不安もあったに違いない。正平は脳下垂体性巨人症にかかっていたとみられる。が、当時はそのような病気の存在は知られておらず、正平が手術を受けたのは巨人軍に入って2年目、18歳の時である。当時の開頭手術の成功率は低く、正平は死を覚悟して手術を受けたのだろう。

 野球選手としての正平があまりぱっとしなかったのは知られているところだ。それでも球団内でもファンにとっても人気者であった。これも、生来の社交性と明るさのたまものであろう。僕自身はプロレスラーとしての馬場しか知らない。「あぽ」とか言いながらぎこちない動きでチョップやキックを繰り出し、それでも勝ってしまうところが良かった。本書を読んで、馬場正平という人物の青春を知り、昭和の匂いを久々に思い出すことができた。

 ◇ひろお・こう=1959年、大阪市生まれ。ライターなどとして活躍。著書に『プロ野球解説者を解説する』など。

 イースト・プレス 1852円

読売新聞
2016年2月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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