『触楽入門』 仲谷正史、筧康明、三原聡一郎、南澤孝太著

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触楽入門

『触楽入門』

著者
仲谷正史 [著]/筧康明 [著]/三原聡一郎 [著]/南澤孝太 [著]
出版社
朝日出版社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784255009056
発売日
2016/01/15
価格
1,706円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『触楽入門』 仲谷正史、筧康明、三原聡一郎、南澤孝太著

[レビュアー] 高野ムツオ(俳人)

 景色は目で見、音は耳で聴く。鼻で匂いを嗅ぎ、舌で食事を味わう。私たちは五官をそのように個別化してしまっている。まして「触感」は、感覚としても普段意識すらしない。しかし、これは大きな誤りで、五官は相互に密接に関わり外界を認識している。ことに触感は五官の根本であると説く。確かに赤ん坊はまず触り舐(な)めることで世界を知り、音楽は全身を使って楽しむ。

 本書はテクタイルという情報工学の先端技術を基に、触感の研究に取り組む若い四人が、触感の秘密や未来について、具体例を上げながらわかりやすく説いたものだ。タイトルには人間にとって必要不可欠な「触れる」という感覚を再認識し「触」れることをもっと「楽」しむ風土を醸成したいという願いがこもっている。「テクタイル・ツールキット」は何もないところに物の感触や実在感を作り出す道具だが、バーチャルな世界が加速化する昨今、その「触感」が人々に感動を与えるという。触感が現実感を生み、その実感が私たち自身に生きる喜びを与える。そこに情報化社会を生きる人間のあり方を見出(みいだ)そうとしている。

 朝日出版社 1580円

読売新聞
2016年2月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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