『その姿の消し方』
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明文堂書店石川松任店「精一杯の背伸びをして、その作品に触れてみる。」【書店員レビュー】
[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)
堀江作品を読む時、ぼくは《精一杯》、背伸びをしている(背伸びをすることはよくある。恥ずかしい話ですが・・・・・・)。堀江敏幸の描く世界の中をただ彷徨っているだけで、その世界を把握できているわけじゃない(難解な言葉が羅列されている、という意味ではないですよ)ような気がするのだ。
本書は1938年の絵はがきに書かれた十行詩をめぐる小説なのだが、流麗な文章に引き込まれて飽きることがない。ただこの小説の凄さは、きっとそれだけで済むものではないのだ。それはもしかしたら凄さの一端に触れられただけでも満足できてしまうところなのかもしれない。
読んで幸福感を得られたのだから、理解とか把握とか、どうでもいいじゃないか、と言い訳ではなく本気で思える小説です。ぼくの下手くそな文章で目を汚された方は、『その姿の消し方』で綺麗に洗ってください。