『最高のリーダーは何もしない』 藤沢久美著

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最高のリーダーは何もしない

『最高のリーダーは何もしない』

著者
藤沢 久美 [著]
出版社
株式会社ダイヤモンド社
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784478068137
発売日
2016/02/04
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『最高のリーダーは何もしない』 藤沢久美著

[レビュアー] 柳川範之(経済学者・東京大学教授)

逆説的なメッセージ

 タイトルをみて、「リーダーが何もしなかったら、組織が動くわけないじゃないか」と反発したら、それはもう著者の術中にはまっているのかもしれない。タイトルだけではなく中身も、リーダーはこうあるべきだと言われてきた通説とは、かなり異なるリーダー論が展開される。

 けれども、中身はとても納得がいく内容だ。決して突拍子もない主張がされているわけではない。読み終えたころには、むしろ、この本で書かれているリーダー像のほうが、まっとうなリーダーだと思えてくるかもしれない。

 傷つきやすく繊細な人ほど、優秀なリーダーになれる。優れたリーダーほど、周りに対して、細やかな気配りをするという指摘は、確かにと思わせる内容だ。

 声高に命令を伝えるのではなく、人や組織にビジョンを浸透させること、自分の思いを伝えることが大切で、そうすれば人が自然と動いてくれるというのが、「何もしない」という逆説的なタイトルに込められた著者のメッセージだろう。

 このような本書の主張に、強い説得力を与えているのは、「1000人の社長たちから聞いた」と表紙にあるように、著者が取材等を通じてとても多くのリーダーと接し、生の言動や素の姿を見てきたという事実だ。

 本のあちこちに著名経営者や世界中のリーダーの名前や事例がふんだんに出てくる。著名人の意外な一面が垣間見えるエピソードも多く、それらを読むだけでも十分に楽しめるだろう。

 経営者だけがリーダーではない。管理職となって、いかに部下をまとめるかに腐心している人は少なくないだろう。あるいは、趣味の同好会や町内会の活動等、身近な場面でも、リーダーシップを発揮しなければならない立場に立つ場合は意外と多い。そんな場面に遭遇したときにも、この本は多くの示唆と勇気を与えてくれるに違いない。

 ◇ふじさわ・くみ=シンクタンク・ソフィアバンク代表。文部科学省参与、各種省庁審議会の委員などを務める。

 ダイヤモンド社 1400円

読売新聞
2016年3月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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