『身近な鳥の生活図鑑』 三上修著

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身近な鳥の生活図鑑

『身近な鳥の生活図鑑』

著者
三上 修 [著]
出版社
筑摩書房
ジャンル
自然科学/生物学
ISBN
9784480068590
発売日
2015/12/07
価格
1,015円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『身近な鳥の生活図鑑』 三上修著

[レビュアー] 高野ムツオ(俳人)

 「初鴉(はつがらす)」は新年、「燕(つばめ)来る」は春、「稲雀(いなすずめ)」は秋。いずれも俳句の季語として古来親しまれてきた鳥。だが、その生態についてどれだけ知っているかと問われると、首をすくめるしかないのも、また事実だ。

 現代人は、あまりにも同じ世界の他の生き物について関心がなさ過ぎるのではないか。むろん鳥類に限った話ではない。他の動植物も、さらには、人間同士にも言えることだ。隣人の顔や声に無関心で過ごす現代の都市生活は、やはり尋常とは言えない。

 これらは本書に導かれながらスズメやハト、カラスなどの生態を具体的に知るにつれ脳裏を掠(かす)めた感想の一端。

 しかも、多くの身近な鳥類は急速に数を減らしつつある。それも人間のせいだが、その人間の文化に合わせて順応し、生き存(ながら)えている鳥も多い。そうした鳥の生態に関心を深め観察することは、実は人間そのものの活動を知ることにつながると著者は指摘する。身近な鳥は、人間を含めた他の生きものと密接に関わりながら生きているのだ。鳥類に限らず、滅ぶ時は一蓮(いちれん)托生(たくしょう)なのである。そんな思いも読後の胸をふっと過(よ)ぎった。

 ちくま新書 940円

 

読売新聞
2016年3月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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