【聞きたい。】本城雅人さん『ミッドナイト・ジャーナル』 事件記者の役割とは何か

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ミッドナイト・ジャーナル

『ミッドナイト・ジャーナル』

著者
本城 雅人 [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784062198998
発売日
2016/02/24
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【聞きたい。】本城雅人さん『ミッドナイト・ジャーナル』 事件記者の役割とは何か

[文] 村島有紀

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本城雅人さん

 「つらくいやなことも多いけど、記者はすばらしく人間味のある仕事。自分の仕事や生活と重ねて、面白く読んでほしい」

 元スポーツ紙記者、本城雅人さんの新作は、新聞社の記者が主人公。誘拐された被害者の女児は生存していたのに死亡したという大誤報を飛ばしてしまう。7年後、新たに児童連続誘拐事件が発生し、記者たちは過去の事件との関連を疑い、埋もれた事実を追求するというストーリーだ。

 理不尽とも思える新人教育や無駄の積み重ねのような夜回りといった泥臭い取材手法、警察内部の主導権争いなどが細部に至るまで圧倒的なリアリティーで描かれる。

 「自分が入社したときは、スポーツ記者の希望者も1年目は支局でサツ(警察)回りをしたんです。そのときに自分が体験したり、見たり、聞いたりしたことを思い出しながら書きました」

 ただし、自身が入社したのは平成元年。小説の舞台となる現代とは、四半世紀の時代差がある。携帯電話もインターネットもない25年前、メディアは事実上、情報を独占していた。が、ツイッターやブログを通じて、誰でも手軽に情報を発信できるいま、火災などの発生時も取材者が現場に駆けつけるよりも早く、たまたま居合わせた人がインターネットなどで速報する。そんな時代における事件記者の役割とは何か-が本書のテーマでもある。

 「情報というのは、時に間違った方向にいくことがある。記者は、聞いた話が本当かどうか裏付けを欠かさず、もし誤報を出せば、責任を取る。取材先の懐に入って信頼関係を築いてネタを取る仕事の根幹は、20年前も今も変わらない」

 〈先入観は罪。固定観念は悪〉〈嘘をつかれたら、本当のことを言うまで食い下がる〉など、取材のノウハウも面白く描かれる。新聞記事を読んでいるあなたに、ぜひ読んでもらいたい。(講談社・1600円+税)

(村島有紀)

【プロフィル】本城雅人(ほんじょう・まさと) 昭和40年、神奈川県生まれ。明治学院大卒。平成21年に『ノーバディノウズ』でデビュー。『球界消滅』『トリダシ』など。

産経新聞
2016年3月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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