『1493 世界を変えた大陸間の「交換」』 チャールズ・C・マン著

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1493――世界を変えた大陸間の「交換」

『1493――世界を変えた大陸間の「交換」』

著者
チャールズ・C. マン [著]/布施由紀子 [訳]
出版社
紀伊國屋書店
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784314011358
発売日
2016/02/25
価格
3,888円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『1493 世界を変えた大陸間の「交換」』 チャールズ・C・マン著

[レビュアー] 出口治明(ライフネット生命保険会長)

グローバル化の実相

 先コロンブス期のアメリカ大陸の常識を覆し、センセーションを巻き起こした『1491』(NHK出版)の著者が、再び世に問う問題作。前作が“ビフォー”の高度なアメリカ文明を描いたのに対し、今作は“アフター”の混乱する世界が描かれる。コロンブスのアメリカ到達(1492年)によって、貴金属、病原菌、動植物、そして人間が大陸間を行き交い、世界は「コロンブス交換」によって「均質新世」の到来を迎えた。

 まず天然痘やインフルエンザなど、新大陸では知られていなかった感染症が爆発的に流行し(エピデミック)、元の人口の4分の3以上を死滅させた。先住民は大規模な焼畑を行っていたが、死に絶えたために森林が再生して地球は寒冷化し、小氷期が到来した。マラリアや黄熱病が追い打ちをかけ、激減した人口を穴埋めするため、病に強いアフリカ人が奴隷貿易によって新大陸に連れて来られた。今日の新大陸の景観は先住民とアフリカ人が創ったのだ。

 新大陸の銀はマニラを拠点に絹や磁器との交換で中国に飲み込まれていく。一方、中国の人口は新大陸のトウモロコシやジャガイモ、サツマイモのおかげで急増した。新大陸のタバコは瞬く間に世界に拡(ひろ)がり、ジャガイモはヨーロッパでも農業革命を引き起こして救世主となったが、エピデミックが生じるとアイルランド飢饉(ききん)のように悲惨な状況を招いた。新大陸のゴムノキは、鋼鉄、化石燃料と並んで産業革命の主役を演じた。こうした欲望の帰結として、世界はグローバル化したのである。

 4部10章にわたってコロンブス交換のすさまじき実相を余すところなく暴露する著者の手腕は前作同様、痛快極まりない。ユーラシアを均質化させたモンゴルに関する知見に乏しいことが惜しまれるが、中国のマルサスと呼ばれる洪亮吉(こうりょうきつ)のような個性的な人物や、マルーン(逃亡者の共同体)など興味深いエピソードを巧みに配して800ページ超を一気に読ませる快作だ。布施由紀子訳。

 ◇Charles C.Mann=ジャーナリスト、科学ライター。『1491』で米国科学アカデミー・コミュニケーション賞。

 紀伊国屋書店 3600円

読売新聞
2016年3月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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