『ぼくの道具』 石川直樹著

レビュー

3
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ぼくの道具

『ぼくの道具』

著者
石川 直樹 [著]
出版社
平凡社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784582836974
発売日
2016/01/22
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『ぼくの道具』 石川直樹著

[レビュアー] 稲泉連(ノンフィクションライター)

 写真家で冒険家の著者が、自身の愛用する旅の道具を紹介したエッセイ集である。

 ヒマラヤ登山の装備、山で原稿を書いたり写真を撮ったりするための仕事道具、あるとちょっと便利な小物まで、体験に裏打ちされた品々が並ぶ。イラストや写真も多く、登山好きの人は特に興味が尽きないのではないか。

 道具は一つ増えるごとに、その旅の制約にもなりかねないものだ。GPSは便利だが、使えなくなった時に無力となる。一方で星の運行を使うミクロネシアの伝統的な航海術では、そのような問題は生じない。何を持ち、何を持たないか。その判断は極地では命の問題なのだ。だからこそ「その土地の環境に合わせて自分を変化させる勇気を持ち、生きるための知恵を身に付けようと努力」することこそが重要だ、と道具論の本質を著者は突く。そうして初めて道具は自らの旅を軽く、自由にしてくれるのだ、と。

 一つひとつの解説からは、登山や旅の過酷さ、それ故の醍醐(だいご)味が伝わってくる。一貫したまなざしによって選ばれた道具が映し出すのは、冒険家のストイックな世界観だろう。

 平凡社 1500円

読売新聞
2016年3月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加