『たそがれゆく未来』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
明文堂書店石川松任店「今、私達が住む世界は、どんな未来へ向かっているのだろうか?」【書店員レビュー】
[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)
永きに渡る原水爆実験によって大気中に堆積されたストロンチウム90の影響によって火の雨が降るようになった世界を生きる男女の姿を描いた・・・・・・高木彬光「火の雨ぞ降る」、今は昔、村人の稚彦は狩の途中、自分達の言葉を理解できない男と出会う。《トモ》と命名され、稚彦の村に住むようになった彼は、明らかに村人達と比べて発展した文明の人間に思われた。異星人と未開人の接触が切ない余韻を残す・・・・・・矢野徹「耳鳴山由来」、最後の一言が読者に強烈なインパクトを与える。アンソロジーの締めを務める傑作SF漫画・・・・・・楳図かずお「Rojin」(本来のタイトルの表記は、ローマ字のoに、サーカムフレックスという山の形の記号が付く)など、全14篇のアンソロジー。
アンソロジー《巨匠たちの想像力》シリーズ第三巻のテーマは文明崩壊。発展する文明への批判、現代社会への警鐘など、第二巻のテーマである管理社会と繋がる部分も多く、二巻が楽しめた人は引き続き読んで欲しい(もちろん、そうじゃない人もね!)
結末に希望を残すものもあれば、諦めの境地に達したかのような作品もある。様々な未来の世界(あるいはまったく異なる文明)が描かれるが、どれも《見たくない未来》が《魅力的》に描かれている。崩壊した(しつつある)文明は、儚く、歪んでいて、美しい。フィクションとしてはあまりにも魅力的なテーマと言えるのかもしれない。
今、私達が住む世界は、どんな未来へ向かっているのだろうか?