『コーヒーの人 仕事と人生』 numabooks編

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コーヒーの人 : 仕事と人生

『コーヒーの人 : 仕事と人生』

著者
numabooks [著]
出版社
フィルムアート社
ISBN
9784845915866
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『コーヒーの人 仕事と人生』 numabooks編

[レビュアー] 牧原出(政治学者・東京大教授)

 ゆっくりと豆にお湯を注ぎ、カップを口元に近づけると、えも言われぬ香が立ちのぼる。至福の瞬間。それがコーヒーである。

 世界のコーヒー文化を探った映画「ア・フィルム・アバウト・コーヒー」の国内配給を手がけた内沼晋太郎氏が、今度は現代日本のコーヒー・プロ6人へのインタビュー集を作った。全国各地に根付いた喫茶店文化の中で育ち、欧米で生活に根ざしたコーヒーの味わいに触れ、帰国後店を開いた人が多い。こだわりは、「オレ」のコーヒーであったり、世界のどこともちがう「日本のコーヒー」であったり。ローカルとグローバルの交差点に花開く個人とネイション。

 映画では、貧しいコーヒーの産地を支援するため、高価格コーヒーを先進国で販売することの意義が強調されていた。だが途上国と現代アメリカの映像から浮かぶのは「搾取」の2文字。他方、本書では、「エスプレッソを通して人生を歩む」といった風味を追究する職人の佇(たたず)まいが印象的。飲み手の心に響くつつましやかな言葉を探し求めた頁(ページ)から、コーヒーの香りが漂うようだ。

 フィルムアート社 1500円

読売新聞
2016年3月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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