『レア RARE 希少金属の知っておきたい16話』 キース・ベロニーズ著

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レア RARE

『レア RARE』

著者
キース・ベロニーズ [著]/渡辺 正 [訳]
出版社
化学同人
ジャンル
自然科学/自然科学総記
ISBN
9784759818208
発売日
2016/03/10
価格
2,160円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『レア RARE 希少金属の知っておきたい16話』 キース・ベロニーズ著

[レビュアー] 柴田文隆(読売新聞社編集委員)

国際情勢映す争奪戦

 炭素Cは、鉛筆の芯だ。窒素Nは肥料。酸素Oを吸わずに生きていける人はいない。

 こんなに性質の違う物質たちだが、元素周期表では原子番号6、7、8番と仲良く席を並べている(化学の授業で暗唱した「水兵リーベ、僕の船」の、ボ「クノ」の部分)。原子核内の陽子数が1個違うだけでこんなに個性が変わってしまう元素って、本当に不思議だ。

 本書の主人公レアアースはスカンジウムなど存在量が極めて少ない17種の元素。レアアースや、それを含む貴重な元素たちであるレアメタルがなかったら、パソコンやスマホ、液晶テレビなどは作れないし、ハイブリッド車の高性能化も不可能だ。21世紀の日本の競争力はこの確保にかかっており、調達先の多様化、代替品の開発、再利用の拡大が図られている。

 この争奪戦で圧勝しているのは中国だ。大きな鉱山があり、「途方もない安売り」で世界市場から米国、豪州の企業を追い落とした。レアメタルの採掘可能量の95%以上は中国にあると推定され、優位は当分続く。この戦略のレールを敷いたのは、1992年に「中東には石油があり、中国には希土類がある」と述べたトウ小平だが、著者は、失脚と復活を繰り返した彼の運命にも数ページを割く。こうした歴史的背景への目配り、挿話で人物を描く工夫もあって、化学が苦手という人でも一気に読める。

 私は、読了したこの本を「レアアース争奪戦史」を記録するスクラップ帳として使うつもりだ。このバトルにはあらゆる国際情勢、科学のニュースが複雑に絡む。資源が枯渇してきたら人類は、海底や南極はおろか、月や小惑星にまで手を伸ばすはず。ネタは尽きない。

 おっ、1億トン・5兆ドル相当のプラチナを含む小惑星接近という新聞記事発見。ダイヤモンドだらけの天体なんてのもあるのか。よし、これが捕獲資料第1号。さっそく小惑星(219ページ)のところに貼っておこう。渡辺正訳。

 ◇Keith Veronese=1981年、米アラバマ州生まれ。米のオンラインメディアで健筆を振るう科学ライター。

 化学同人 2000円

読売新聞
2016年3月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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