『宇宙からいかにヒトは生まれたか』 更科功著

レビュー

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

宇宙からいかにヒトは生まれたか

『宇宙からいかにヒトは生まれたか』

著者
更科 功 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
自然科学/生物学
ISBN
9784106037818
発売日
2016/02/26
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『宇宙からいかにヒトは生まれたか』 更科功著

[レビュアー] 出口治明(ライフネット生命保険会長)

偶然と必然 壮大な物語

 なぜヒトは宇宙論や生物学に惹(ひ)かれるのか。それは僕たちの身体が星の欠片(かけら)からでき、ヒトが細菌のような生物から進化したことを自覚するからだ。本書の帯には「宇宙・地球・生命を通史で読める初めての1冊」とある。これまでの歴史書とは桁違いの138億年史が、アイドルや携帯電話など身近な話題も巧みに織り込んで読みやすく構成されている。

 章立ては5部。「宇宙の誕生」「地球の形成」「細菌の世界」「複雑な生物の誕生」「生物に満ちた惑星」と続く。ビッグバンが138億年前に起こり太陽系が46億年前に形成された。地球が45・5億年前、月が45億年前、遅くとも38億年前までに海ができた。生物の誕生は約40億年前。すべての生物の最終共通祖先、ルカは深海の好熱菌であったという。30億年前、磁場ができて太陽風(有害な放射線)がカットされ、生物が浅い海に進出して光合成細菌が出現する条件がここで初めて整った。19億年前、真核生物が誕生し多細胞生物へ。6億年前頃から多細胞生物が大きくなり、多様性が増す。その引き金を引いたのは熱帯まで凍り付いた「スノーボールアース(全球凍結)」、即(すなわ)ち氷河時代の終了だった。

 5・4億年前から始まるカンブリア紀に、進化史上最大のカンブリア爆発が起こる。動物を食べる動物が現れ、食う食われるの「軍拡競争」が生じたことが原因で、骨格が誕生し多様なボディプランが確立され眼(め)が出現したが、大多数の生物はまだ海中で暮らしていた。6億年前、酸素濃度が現在のレベルに達してオゾン層が形成され植物が海から上陸、3・6億年前から、ようやく生物が陸上に広がっていった。その後は、恐竜、隕石(いんせき)の衝突、人類の誕生と続き、10億年後には水が蒸発し、地球の生命の歴史は終わるという。

 磁場やオゾン層など地球の物理的条件が生命に与える影響の甚大さに慄然とした。この偶然と必然が織り成す壮大な物語を読めば、ヒトはもう少し謙虚になれるのではないか。

 ◇さらしな・いさお=1961年生まれ。理学博士。専門は分子古生物学。著書に『化石の分子生物学』など。

 新潮選書 1300円

読売新聞
2016年4月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加