【写真集】『海を渡って』鶴崎燃

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【写真集】『海を渡って』鶴崎燃

[レビュアー] 篠原知存(産経新聞 文化部編集委員)

■移民通じて見る社会

 移民を取材したフォトドキュメンタリー。日本×満州、日本×ミャンマー、日本×ブラジルの3章で構成されている。各国から日本へ渡ってきた人たちと、その国へ渡った日本人を撮影している。10年かけたという労作だ。

 日本国内と海外の写真を混在させたレイアウトが巧妙。同じページに上下に並べられた写真に、直接的な関連性はない。たとえばブラジル編に出てくる名古屋の団地とサンパウロの老人ホーム。遠く隔たった場所と人々だが、写真的に似ていたりする(構成要素やポーズが近い)ことでつながりを連想させる。そして写真説明を読んで、来歴や背景を知れば、実際にまったく無縁ではないことがわかってくる。

 歴史や社会を見つめ直す良質のドキュメンタリーとして楽しめるのに加えて、写真の不思議さ面白さも教えてくれて、知的刺激満点。第13回ビジュアルアーツフォトアワード大賞受賞作。(ビジュアルアーツ・4000円+税)

 篠原知存

産経新聞
2016年4月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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