『五〇億年の孤独 宇宙に生命を探す天文学者たち』 リー・ビリングズ著

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五〇億年の孤独

『五〇億年の孤独』

著者
リー・ビリングズ [著]/松井 信彦 [訳]
出版社
早川書房
ジャンル
自然科学/天文・地学
ISBN
9784152096098
発売日
2016/03/24
価格
2,160円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『五〇億年の孤独 宇宙に生命を探す天文学者たち』 リー・ビリングズ著

[レビュアー] 柴田文隆(読売新聞社編集委員)

「第2の地球」はあるか

 宇宙は知的生命に満ちているのか。それとも地球人類は孤独なのか。この壮大な謎に挑む地球外知的生命体探査(SETI)の電波天文学者、「第2の地球」を探す系外惑星天文学の研究者たちが、この本の主人公だ。

 米国立電波天文台のドレイク博士が異星人文明の発する信号探しを始めたのは1960年。彼はこの銀河系に高度な文明が1万はあると推定したが、メッセージの受信には成功していない。代わって90年代に台頭したのは大型望遠鏡を使った系外惑星天文学で、すでに2000個を超える候補を観測しているが、地球型と呼べるものは見つかっていない。

 宇宙生命探査は、<(あ)地球のような生命惑星×(い)存在する×(う)発見できる>というシナリオだ。(い)は確実だ(と思う)。障害は、惑星観測専用の宇宙望遠鏡を打ち上げられるか((う))だろう。いまや、人類の夢にぽんと数百億円の開発費を出せる国はなく、開発計画は軒並み凍結の憂き目に遭っているのだから。

 そう思っていた。しかし本書を読むと、(あ)の定義付け、生命に優しい惑星の条件解明こそが最大の難問だと思えてくる。第2の地球、地球型と簡単に言うが、われわれは「第1の地球」がどのように生命を誕生させ、育んできたのかちゃんと理解できているのだろうか。

 (あ)の研究に打ち込んできた米ペンシルベニア州立大のカスティング教授の業績が計45ページにわたって紹介される章は圧巻だ。地球の大気、地殻、海洋、火山などが複雑に相互作用し、精妙なバランスが保たれ、40億年も生命が存続してきたことを知ると謙虚な気持ちにさせられる。温暖化防止、生物多様性維持のためにも、こうした惑星科学の研究推進は重要だ。

 冒頭の謎の答えが前者なら、地球の一体感は強まるはずだ。後者だったら寂しいが、この星を慈しむ心は深まる。われわれの世代が答えを知ることはないだろう。松井信彦訳。

 ◇Lee Billings=サイエンスライター。科学、テクノロジー、文化の交錯する領域について科学誌などに執筆。

 早川書房 2000円

読売新聞
2016年4月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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