『10億ドルを自力で稼いだ人は何を考え、どう行動し、誰と仕事をしているのか』 ジョン・スヴィオクラ、ミッチ・コーエン著

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『10億ドルを自力で稼いだ人は何を考え、どう行動し、誰と仕事をしているのか』 ジョン・スヴィオクラ、ミッチ・コーエン著

[レビュアー] 柳川範之(経済学者・東京大学教授)

成功のカギ導き出す

 10億ドル、日本円にして約1100億円を超える財産を、親からの遺産等ではなく自力で稼ぎ出した、いわゆるビリオネアとは一体どんな人物達(たち)なのか。世界的コンサルティング会社が、その実態にかなり包括的に迫っている。

 その中には、もちろんスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ等も含まれている。彼らの伝記や仕事ぶり等が、個別に紹介されることは、しばしばある。しかし、ビリオネアをずらっと集めて、彼らに共通の特徴を探ってみるというのは、実はありそうでなかった試みだろう。まず、全体像に驚かされる。

 たとえば、IT長者たちというイメージがあるが、実はIT業界出身者は全体の2割にも満たないとか、若くして大成功した人が多いと考えがちだが、実は失敗を重ねた人も多く、7割以上の人が30代以降に成功のきっかけをつかんでいる等。多くの人の情報を集めることで、初めて分かってくることがあり興味深い。

 とはいえ、評者も含め、多くの読者にとってはビリオネアなんて、雲の上の他人事で、自分がなれるとも思わないし、そもそもなる気もない。どんな人物がビリオネアになっていようとどうでもいいような気がする。

 しかし、本書がそういう人たちにとっても魅力的なのは、単なる成功者の紹介にとどまらず、成功するためのカギを多くのビリオネアのデータから導き出しているからだ。

 多くのビリオネアに共通しているのは、その内面つまり考え方や発想の仕方であり(それを本書では、ビリオネア・マインドと呼んでいる)、それは別に大金持ちになるのが目標でなくても、どんなことをするうえでも、きっと重要になるポイントだ。

 その詳細については、本書を手にとっていただくしかないが、天賦のものとして与えられているのではなく、習慣と継続によって誰でもが身に着けられるという点は、大いに勇気づけられるだろう。高橋璃子訳。

 ◇John Sviokla=PwCパートナー ◇Mitch Cohen=同社バイス・チェアマン。

 ダイヤモンド社 1600円

読売新聞
2016年4月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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