『ははがうまれる』 宮地尚子著

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ははがうまれる

『ははがうまれる』

著者
宮地尚子 [著]/呉夏枝 [イラスト]
出版社
福音館書店
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784834082456
発売日
2016/02/10
価格
1,188円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『ははがうまれる』 宮地尚子著

[レビュアー] 長島有里枝(写真家)

 二〇一〇年から五年間、雑誌「母の友」に掲載されたエッセイには、子育ての「当たり前」が淡々と綴(つづ)られている。ほとんどの母親が経験するだろう困難や不安や疑問に与えられる、自身も母である精神科医の共感の言葉や見解はしかし、十年前の私には当たり前と思えなかった「視点」だ。

 「母性」は女だから備わっているものではない、というような著者の言葉は、思い通りにならない子育てのなかで挫折感に打ちひしがれる母親の気持ちを救うはずだ。十年前にこの本が側(そば)にあったら、読みながら独りで泣いたかもしれない。

 母であることは職業に似ている。仕事と違うのは、対価が支払われないことだ。男でも子育てはできるが、女と違うのは、賞賛という対価をいとも簡単に獲得できる点だ。街で見かけた赤ちゃんをあやすとき、その子を抱くお母さんの顔を見て、声をかけてきただろうか。個人としての「母」は、いつも埋没しがちだ。タイトルが示唆するように、子供の誕生日は一人の母が生まれた日でもあることを忘れないようにしたい。(福音館書店、1100円)

読売新聞
2016年4月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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