【聞きたい。】セス・フリードさん 『大いなる不満』藤井光訳

インタビュー

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大いなる不満

『大いなる不満』

著者
セス・フリード [著]/藤井 光 [訳]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784105901097
発売日
2014/05/30
価格
1,944円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

【聞きたい。】セス・フリードさん 『大いなる不満』藤井光訳

[レビュアー] 海老沢類(産経新聞社)

1
セス・フリードさん

■生の奇怪さとすばらしさ

 「アイデアを豊富に注ぎ込める。多様なものを描ける楽しさが短編にはある」

 死傷者が続出しているのに毎年のように繰り返される奇妙なピクニック、滑稽で偏見にみちた劇に参加した恥を引きずる男…。毒があって、どこか笑える11の短編を収める。「とっぴな設定でも出発点は個人の体験にある。生活の中で感じるフラストレーションや無力感…そうしたものを増幅させて書いているのです」

 そんな切実さをともなった批評性は、ラストの一編「微小生物集」で存分に発揮されている。架空の微小生物の入門書の趣で、それぞれの生態が淡々と説明されるだけ。同種間で殺し合う生物があり、平均寿命が1億分の4秒しかない生物も出てくる。愚かしさと不条理にまみれた生態の記述を読み進むうち、翻って人間の営みとは?と考えさせられていることに気づく。

 「人間を描写するときにリアリズムで『こうすべきだ』と書くと説教じみた感じになってしまう。全く別の存在を持ち出して寓話(ぐうわ)的に描けば楽しいし、文化を超えて伝わる作品にもなり得る。今、人として生きていることの奇妙さ、そしてすばらしさを感じてもらえたらうれしい」

 愛読する作家として、イタリアのカルヴィーノらに加え、川端康成を挙げる。「川端のストーリーはリアリズムで書かれているが、完璧にオーガナイズされた寓話の趣もある」。今春の東京国際文芸フェスティバル(日本財団主催)に合わせて初来日を果たし人懐っこい笑みを見せる。創作を学んだ学生時代に聞いたという言葉が背中を押す。

 「今の生活に居心地の悪さを感じている人の居心地を良くし、居心地がいいなと感じている人の居心地を少し悪くさせる-。そこに小説を書く意義や目的があると聞かされたのです。だから人間のダークサイドだけでなく希望も書きたい。面白いジョークも交えながら」(新潮社・1800円+税)

 海老沢類

【プロフィル】セス・フリード

 Seth Fried 1983年、米オハイオ州生まれ。ボーリング・グリーン州立大学でラテン語や創作を学ぶ。初の短編集となる本書の収録作でプッシュカート賞などを受賞。

産経新聞
2016年4月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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