『だれかぼくをぎゅっとして!』
- 著者
- Ciraolo, Simona /小比賀, 優子, 1960-
- 出版社
- 徳間書店
- ISBN
- 9784198641054
- 価格
- 1,650円(税込)
書籍情報:openBD
【児童書】『だれかぼくをぎゅっとして!』 孤独なサボテンの運命は?
[レビュアー] 加納裕子
サボテンたちがきれいに並ぶ屋敷で暮らす子供サボテン、サボタ。サボタの願いは「ぎゅっと抱きしめてもらうこと」。でもサボテンが相手に近づくと、けがをさせてしまう。だから立派なサボテンたちはお互いに距離を取り、泣いていても慰めてもくれない。
サボタは新しい仲間を見つけるために、旅に出た。でも誰も仲良くしてくれない。結局、小さな家にひとりで住むことになる。寂しい思いを抱えながら…。
サボタが住む家には「はいるな! トゲがささるぞ!」と看板が掲げられ、ガラスの壁と高い塀に覆われている。本当は抱きしめてほしい、でも抱きしめてもらえない。自分も人も傷つけないようにするには、そうするしかなかったと思うと胸が痛くなる。
人に甘えるのが上手な人ばかりではない。拒絶される経験が重なれば、誰だってサボタのように心を閉ざして自分を守ろうとするだろう。最後に、サボタにはひとつの出会いがある。子供向けの絵本ではあるが、大人も深く考えさせられる。(シモーナ・チラオロ作・絵、おびかゆうこ訳/徳間書店・1500円+税)
加納裕子