『シニアマーケティングはなぜうまくいかないのか』 阪本節郎著

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『シニアマーケティングはなぜうまくいかないのか』 阪本節郎著

[レビュアー] 柳川範之(経済学者・東京大学教授)

高齢化時代の将来設計

 「シニアと呼ばれても、50代の9割は自分のことだと思わず、60代の9割もそう呼ばれたいとは思わない」。本書を何気なく開いたときに、目に飛び込んできたのが、この文章。

 確かに、50代読者の多くは、「え、俺ってシニアなの? それはないよ」と思われるに違いない。60代の方々でも、「人生まだまだこれからだ」と、思っている人々のほうがきっと多いだろう。

 少子高齢化の時代は、長生きできるようになった時代でもある。単に長く生きられるだけでなく、気力も体力も向上している。一説には、20歳位若返っていて、今の60歳は昔の40歳と同じだとか。そんな時代には、昔とは違った新しいライフスタイルが求められるはずだ。

 本書は、タイトルだけみると、典型的なマーケティングの本にみえる。いや、実際に、優れたマーケティングの本だ。でも、単に、どんな人にどんなものを売ったら良いかという視点でだけ読むのはもったいない。

 むしろ、これからの50代、60代が、どう考え、どんな風に未来を設計していったら良いか、そんな生き方像、生活像を示している本として読むと、面白い示唆がたくさん得られそうだ。

 自分だけが従来の世代と違うと感じることが多いのも、この世代の特徴らしい。こんな風に考えるのは、自分だけではなかったんだ、という実感や、気づきも本書から得られるかもしれない。

 何歳になっても若々しく前向きな意識を持ち続けたいと思っている。人生下り坂ではなく、自然体で若々しくセンスの良い大人になって、人生最高のときをこれから実現させたい。本書が浮かび上がらせているのは、そんな風に考えている50代、60代だ。

 少子高齢化時代を本格的に迎えて、50代、60代の人たちが生活のポイントをどこにおくべきか等についても、興味深い考察がなされている。

 ◇さかもと・せつお=博報堂新しい大人文化研究所統括プロデューサー。共著書に『巨大市場「エルダー」の誕生』。

 日本経済新聞出版社 1800円

読売新聞
2016年5月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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