【聞きたい。】押切もえさん 『永遠とは違う一日』 「見えない愛情」を生き生きと

インタビュー

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

永遠とは違う一日

『永遠とは違う一日』

著者
押切 もえ [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784103399315
発売日
2016/02/26
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

【聞きたい。】押切もえさん 『永遠とは違う一日』 「見えない愛情」を生き生きと

[レビュアー] 村島有紀

1
押切もえさん

「見えないところで人と人は繋(つな)がっている。誰かを愛したり、思いあったり…。もし、つまらない、ついていない一日に思えても、そこに見えない愛情があれば、すごく大切な一日になると思う」

 2作目の小説、初の連作短編集が、第29回山本周五郎賞にノミネートされた。女性誌の人気モデルとしてスポットライトを浴びる著者が、小説の主人公に選んだのは、新人モデルの売り出しに奔走するマネジャーや、アイドルの衣装を用意するスタイリストなど裏方の人々だ。立場も違えば年齢も違うが、主人公たちは仕事や恋愛、出産といった転機に迷い、とまどいながらも必死で前に進もうとする。全編を読み終わった後に、ほんわかと心が温まる。

 全6編。そのうちの1編「抱擁とハンカチーフ」の主人公は、アイドルグループに所属する中学生の娘を持つ40代の女性画家だ。何層もの色を塗り重ねたキャンバスを前に「何を伝えたいのか」と悩み、逡巡(しゅんじゅん)する。小説家としてスタートを切った著者自身の悩みでもある。

「(小説が)書けないと追い詰められ、『全部がうまくいかない』と涙が出てきた。でも、この感情が小説に生かせるのではないかと切り替えた。恥ずかしいけど、自分を全部出すしかないんだと。きっと自分しか書けないものがあると、信じて書きつづけた」と振り返る。

 執筆にあたり、初めて取材も敢行した。性的少数者(LGBT)を主人公にした短編では、体は男性だが女性の心を持つ人を知人の紹介で取材。関連本も5、6冊読んだという。

「この本を書いて私は強くなった。好きだと相手に伝えることもできないなかで、愛し続ける人がいる。愛するってすばらしいと、大声で叫びたくなったほどです」

 成長と信頼、そして知らない誰かへの感謝から生まれた物語だ。(新潮社・1400円+税)

 村島有紀

                   ◇

【プロフィル】押切もえ

 昭和54年、千葉県生まれ。10代から読者モデルとして注目され、著書に『浅き夢見し』など。現在「AneCan」専属モデルを務める。

産経新聞
2016年5月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加