意外に知られていないラストの一文から、名作の魅力を読み解くシリーズの完結編。古今東西の137作を紹介している。
谷崎潤一郎『痴人の愛』の〈ナオミは今年二十三で私は三十六になります〉は年齢と作中での愚行との落差を際立たせるし、マルグリット・デュラス『愛人 ラマン』の〈死ぬまであなたを愛するだろう〉は直球の殺し文句。レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』は〈警官にさよならをいう方法はいまだに発見されていない〉と、しゃれた名ぜりふで通す。作家の美学や語りの技法が注ぎ込まれた一文が、再読へと誘う。(中央公論新社・1500円+税)
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2016年5月8日 掲載
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