『スーザン・ソンタグの「ローリング・ストーン」インタヴュー』 ジョナサン・コット著

レビュー

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

スーザン・ソンタグの『ローリング・ストーン』インタヴュー

『スーザン・ソンタグの『ローリング・ストーン』インタヴュー』

著者
ジョナサン・コット [著]/木幡 和枝 [訳]
出版社
河出書房新社
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784309207025
発売日
2016/02/29
価格
2,376円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『スーザン・ソンタグの「ローリング・ストーン」インタヴュー』 ジョナサン・コット著

[レビュアー] 長島有里枝(写真家)

尖鋭的な批評家の素顔

 写真家にとって、スーザン・ソンタグは『写真論』を書いた人だ。でもそれは、批評家としての彼女が比較的早い時期に記した本の一冊に過ぎないし、さらに言えば批評家という肩書きも、ソンタグのある一面でしかない。癌(がん)やエイズ、現代の美術や文学からアメリカが関わった二つの戦争に至るまで、彼女が論じた対象は幅広い。同様に、小説を書いたり映画を作ったり、表現活動の媒体も多岐にわたっていた。

 『写真論』や『反解釈』を読むと、彼女の知識の守備範囲の広さに驚くとともに、多くの疑問が湧く。話が難しいからではなく(それもあるが)、膨大な思考によって複雑になったソンタグという人を想像するのが難しいからだ。例えば、彼女はフェミニズムについてどう思っているのだろう。著作を読む限り、ジェンダーの問題に無関心なはずはないと思うが、真意はわからない。それはおそらく、彼女が事の良し悪(あ)しをあまり言わないからなのだが、ひょっとして「他の女が『男並み』じゃないのは、わたしみたいに努力しないからだ」と考えるタイプのエリートなのかも、と勘ぐる見方もできる。

 「ローリング・ストーン」誌のインタビューは、わたしの知りたかったソンタグを引き出すのに成功している。四十五歳の彼女が、若くして産んだ一人息子のことや、自身の恋愛観にまで言及している。一一四ページでは、女性のことを考えてみましょうと言い、いまから三十八年前に語られたとは思えない、ジェンダーについての鋭い考察を行っている。真実は、それ以外を偽物だと見切ることでしかわからないと考える彼女は、父権制的な価値体系を「間違ったもの」だと言い、人間が男と女に分けられ、それぞれに二項対立的な概念が振り分けられていることを問題視する。当時、女性性を男性性の優位に置くフェミニズムにまだ勢いがあったことを考えれば、ソンタグはなんと尖鋭(せんえい)的だったことだろう。木幡和枝訳。

 ◇Jonathan Cott=米・情報誌「ローリング・ストーン」誌の寄稿者。著書に『グレン・グールドは語る』。

 河出書房新社 2200円

読売新聞
2016年5月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加