『生態学が語る東日本大震災』 日本生態学会東北地区会編

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生態学が語る東日本大震災

『生態学が語る東日本大震災』

著者
日本生態学会東北地区会 [編集]
出版社
文一総合出版
ジャンル
自然科学/生物学
ISBN
9784829971048
発売日
2016/03/12
価格
2,376円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『生態学が語る東日本大震災』 日本生態学会東北地区会編

[レビュアー] 高野ムツオ(俳人)

 東日本大震災の津波は多くの人命を奪い、数知れない建物を破壊した。しかし、その被害は人間以外の生物にも及んだ。中には生態系が危機にさらされたものもあった。

 本書は生態学の研究者たちが、今般の津波が東北沿岸域の自然にどんな影響を及ぼしたか、今後どんな変化が生じるか、それぞれの立場で調査、考察したものである。対象は、干潟や岩場の多様な海洋生物、砂浜や海岸林などの植生、さらには魚、昆虫、両生類からほ乳類まで多岐にわたる。そして、その存亡、変化、再生について分析しながら、それらの未来を探ったものだ。

 この地道な成果について、一言で述べるのは不可能だが、どの研究者にも共通していることは、生き物の生命力のたくましさを再発見した感動と、それらの生物の未来が、そのまま人間の生存と実に密接に繋(つな)がっていることの指摘である。それは裏返せば、生物の復活とそれらとの共生なしには人間の未来そのものが見えてこないという危機感の表れともいえる。地道なデータの積み重ねが主張の背骨となっているだけに声は低いが強い説得力があった。(文一総合出版、2200円)

読売新聞
2016年5月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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