大正末期の東京で市街戦!20ページに1度“心がひりつく”

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リボルバー・リリー

『リボルバー・リリー』

著者
長浦 京 [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784062200356
発売日
2016/04/20
価格
1,998円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

大正末期の東京で市街戦!20ページに1度“心がひりつく”

[レビュアー] 香山二三郎(コラムニスト)

 江戸時代初期、幕府に叛旗をひるがえした戦国の老雄たちが江戸市中でテロを敢行、幕府の掃討使との死闘が始まる……。山田風太郎直系の伝奇時代活劇で一部のファンを熱狂させた長浦京のデビュー作『赤刃』。その待望の長篇第二作は、大正末期の東京で市街戦が繰り広げられるガンアクションの白眉だ!

 序章は関東大震災直後の向島。出産目前の妊婦を手助けしていた玉の井の銘酒屋の主人・小曽根(おぞね)百合は、現れた火事場泥棒を相手に拳銃で応戦、男たちを退治してしまう。

 半年後、舞台は変わって埼玉県秩父。一三歳の細見慎太は被災後、父の欣也を残して家族とこの地に転居、何故か名前を偽って暮らしていた。弟の喬太ともども学校でいじめにあっていたが、筒井国松という日本狼と暮らす老人と知り合い、親交を深める。しかし翌年夏、慎太は突然帰宅した父に封筒の書類を託され、弟とふたりで逃亡を余儀なくされる。父も家族も、父を追ってきた男たちに殺された。国松は兄弟に小曽根百合を頼るよういい伝えるが……。

 かくして百合も細見兄弟のために熊谷まで出向き、追手から逃れ東京に戻るべく決死の旅が始まる。筋立ては一見ジョン・カサヴェテスの映画『グロリア』を髣髴させるが、こちらのほうがスケールが大きい。何せ百合たちを追うのは日本陸軍。街中での発砲も辞さない横暴ぶりだ。その原因は細見欣也にあった。彼は軍と結託して莫大な資金を操作していたのだ。

 やがて小曽根百合もアジア各地で暗殺を重ねた凄腕の元諜報員であることが明かされていく。本書の読みどころが、彼女の繰り出す「二〇ページに一度の心がひりつくアクション」にあるのはもちろんだが、陸海軍が絡む国際謀略小説としても誠に手が込んでいる。リアルでノワールなアクション演出にも磨きがかかり、まずは今年前半の冒険・ハードボイルド小説を代表する傑作に仕上がった。

新潮社 週刊新潮
2016年5月19日菖蒲月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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