伝記と並行しながら絵を観ていくのも面白い
[レビュアー] 図書新聞
芸術家の伝記というのは数多くあるが、カラヴァッジョほど奇妙で謎の多い人生を送った画家もいないのではないか。本書は、生前から素行不良で行く先々でトラブルを起こしながらも絵を各地で残し、死後忘れ去られたにもかかわらず現在は再び評価されるに至ったこの男の生涯を、コンパクトなかたちで生き生きと書き記したオリジナルのアンソロジーである。伝記作家による画家列伝だけでなく、カラヴァッジョの犯罪記録や尋問調書が収められているのが特徴的で、また巻頭にはモノクロであるが52点の作品図版も収録されており、伝記と並行しながら絵を観ていくのも面白い。さらに、今ならば国立西洋美術館で「カラヴァッジョ展」も開催されていて、二重三重に本書を楽しめるであろう。(3・10刊、二四〇頁・本体一三〇〇円・平凡社ライブラリー)