『戯曲を読む術』 林廣親著

レビュー

6
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戯曲を読む術

『戯曲を読む術』

著者
林 廣親 [著]
出版社
笠間書院
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784305708014
発売日
2016/04/05
価格
3,996円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『戯曲を読む術』 林廣親著

[レビュアー] 安藤宏(国文学者・東京大教授)

 かつて「劇文学」という言葉があった。いつしか使われなくなってしまったが、戯曲を戯曲の言葉として読み味わう感覚、とでも言ったらよいのだろうか。それは上演を前提としないレーゼドラマとも違うし、また上演を目的に書かれたシナリオとも違う世界だ。小説家の多くは雑誌の創作欄に戯曲を発表していたし、読者もまた小説を読み味わうようにそれらを楽しんでいたのである。

 研究の領域では小説家の書いた戯曲はその扱いにくさから、ともすれば継子あつかいされがちだ。だが本書はそれに異を唱え、近代演劇史を専門にする著者が、あえて小説分析のスキルをフルに活用して戯曲の言葉を“深読み”してみせている。

 論文の文体なので叙述は必ずしも平明ではないが、谷崎潤一郎の「お国と五平」にせよ、森鴎外の「仮面」にせよ、彼らが「小説」というジャンルでは表現しがたい思いを「劇文学」に託していた事情がうかがえて面白い。ほかにも岡田八千代、岸田國士、井上ひさし、横光利一、矢代静一、田中千禾夫、渋谷天外、恩田陸、木下杢太郎を扱っている。

 笠間書院 3700円

読売新聞
2016年5月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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