【児童書】幸せな結末を手に入れる 『ミスZ オウムさがしの旅』アンジェラ・カーター作、エロス・キース絵、榎本義子訳

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【児童書】幸せな結末を手に入れる 『ミスZ オウムさがしの旅』アンジェラ・カーター作、エロス・キース絵、榎本義子訳

[レビュアー] 永井優子

 ミスZは、黒髪で褐色の肌の娘。オウムのジャングルに住んでいるが、父親がオウムの王を殺し、オウムたちがみな逃げ去ってしまうと、次々と不幸なことが起こる。平穏な暮らしを取り戻すため、彼女はオウムさがしの旅に出る。

「人はひどい苦痛にも耐えうるが、急に耐えきれなくなって切れることもある」。これは、父親のオウム殺しの言い訳と後悔の弁だ。おとぎ話で語られるには、奇妙に生々しい現実感と、華麗で奇抜な幻想世界が共存している。

 誰よりも孤独だという醜い動物・オッドと砂漠を泳いで渡る老いたドラゴンの助けを得て至ったのは、水に映る自分たちの姿をうっとり眺めるユニコーンの国。そして、雨は空に向かって降り、花は地面のなかで咲く、緑のライオンの国。手作りの魔法のドレスを身にまとったミスZは、自身の魅力と行動力で、幸せな結末を手に入れる。

 1970年に出版されたイギリスのフェミニズム作家の作品。寓意(ぐうい)を探りながら、大人が読んでも味わい深い。(図書新聞・1200円+税)

 (永井優子)

産経新聞
2016年5月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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