『れもん、うむもん!』 はるな檸檬著

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れもん、うむもん!

『れもん、うむもん!』

著者
はるな 檸檬 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
芸術・生活/コミックス・劇画
ISBN
9784103365129
発売日
2016/03/28
価格
864円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『れもん、うむもん!』 はるな檸檬著

[レビュアー] 清水克行(日本史学者・明治大教授)

 以前、「普段は可愛(かわい)いのに、食事の時に服を汚す赤ちゃんが、ママには時に悪魔に見える」と語る洗剤のCMが、視聴者から抗議が寄せられるなどして波紋を呼んだ。「大事な子を悪魔だなんて、けしからん!」とのことだが、放送時、子育て真っ最中だった私たち夫婦は、このCMに結構共感し、癒やされていた。

 妊娠・出産・育児体験をもとにしたエッセイマンガは多々あるが、このマンガは特にマタニティーブルーや「産後うつ」を正面から扱って出色である。我が子の些細(ささい)な発育の遅れが、不安でたまらなくなり、自分を責める。さきのCMのように我が子を憎らしく思ってしまい、そんな自分をまた責める。周囲の善意の一言すら無理解なものに思えて、さらに傷つく。そうした複雑で深刻なママの心理が、それと対照的にユーモラスな絵柄で表現されている。

 妊娠や出産は本当に人それぞれで、「正解」がないだけに、ママは孤独な不安に陥りやすい。それを乗り越えたさきの「幸せ」も描かれた本書は、そんな孤独な思いを抱えるママやパパたちを勇気づけ、大いなる癒やしをあたえる本である。

 新潮社 800円

読売新聞
2016年5月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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