『脳からみた自閉症』 大隅典子著

レビュー

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

脳からみた自閉症 「障害」と「個性」のあいだ

『脳からみた自閉症 「障害」と「個性」のあいだ』

著者
大隅 典子 [著]
出版社
講談社
ジャンル
自然科学/医学・歯学・薬学
ISBN
9784062579643
発売日
2016/04/21
価格
972円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『脳からみた自閉症』 大隅典子著

[レビュアー] 岡ノ谷一夫(生物心理学者・東京大教授)

 社会的な関係構築に困難を感じる人々がいる。自閉症と呼ばれ、発達障害と位置づけられる。しかしこの診断名が問題であることが、本書を読むとよくわかる。理由は二つ。第一に、自閉症には環境よりも遺伝子の影響が圧倒的に強い。それなのに、ワクチンや育て方が原因だという誤解がいぜん流布している。英語のDevelopmentは遺伝子が体を形成する過程である「発生」の意味も含む。これを、生まれてからの成長を示す「発達」と略して訳したのが誤解を招いている。第二に、自閉症者と健常者の違いは症状の量的な差だけであり、本来は連続している。線引きは難しい。40年前に比べ、自閉症は70倍に増えているという。晩婚化による遺伝子の損傷といった理由もあるが、診断基準と社会の変化が増加の原因であることも明らかだ。

 コミュニケーション能力が人生を決めると思い込んでいる若者が多い。人付き合いは苦手だが、個性的な業績を残す人々の居場所が確保されるべきだ。本書には、分子生物学の基礎知識にもとづく自閉症の正しい見方を伝えたい、という願いが強く感じられる。

 講談社 900円

読売新聞
2016年5月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加