うちの会社にとっての優秀さとは何か?

インタビュー

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採用学

『採用学』

著者
服部 泰宏 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784106037887
発売日
2016/05/27
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

うちの会社にとっての優秀さとは何か?

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服部泰宏さん

――本書の特徴をまずお聞かせください。

 面接の仕方や「こうした人材を採れ」みたいな、いわゆる採用のノウハウ本はいくつかありますが、採用を科学的な視点から捉えたのは初めてだと思います。

――科学的とは?

 個々の会社の実情に合った人材の採り方の理論書ですね。採用にノウハウ書というのはありえないんです。なぜなら、個々の企業にとって最適な人材は異なるはずだし、ほしい人材が違えば採用方式も異なってくる。採用が異なれば面接の仕方も変わってくるはずですから。

――実際にそうした新しい形の採用を取入れている企業は多いのですか?

 ここ10年でだいぶ様相が変わってきましたね。ことに、2016年卒から始まった経団連の就活指針(3月広報解禁、8月選考解禁)をきっかけとして変化してきました。景気が後退し、かつ企業のグローバル化を強いられたところに、採用時期が「後ろ倒し」になってドライブがかかった感じですね。

 今まで日本の採用は、科学的に考えなくても回って来ていたんです。多くの会社が、採用よりも「育成」の方に力を入れてきましたから。つまり、そこそこの学校を出た、無難な人材を採用して、時間をかけて「ウチの会社の色」に染めていくことを繰り返してきたわけです。

――それができなくなってきた?

 年功序列が崩れ、一生その会社に属するということが崩れ始めてきた影響もあります。つまり、のんびりと10年かけて育成する環境じゃなくなったわけです。そこそこの人間じゃなくて、自社にとって必要な能力を持つであろう人材がより強く求められるようになった。あるいはグローバル化によって、海外に出て、他国の人間とコミュニケーションし、あるいは闘える人材には今までとは異なる能力が必要で、無難な人材ではダメなわけです。これは、市場が縮小し競争が激化している国内でも同じことが言えます。

――今年の就職戦線の様子は?

 昨年ほどの混乱はなかったようです。採用の基本は、対前年、対他社なんです。去年の今頃何をしていたのか、去年はどんな学生が来たのか、同業他社の様子はどうなのかがベースなんです。ところが、去年の採用からスケジュールが後ろ倒しになり、前年踏襲・他社の様子見ができなかった。そこで、思い切って新しい採用に踏み切った企業が少なからずありました。あるいは、新しいアクションができず、呆然として(笑)、新しいことをせずに臨んだ大企業も。弱者(中小・ベンチャー企業)が強者(大企業)を喰った例はいくつも聞きました。2017年卒でいえば、2016年卒からさらに採用イノベーションを押し進めた企業は多かったですね。

――新しい採用の具体例を2、3上げてください。

 よく知られているところでは新潟の三幸製菓でしょう。採用だけでメディアにだいぶ取り上げられましたから。

 採用の入口を複数にしたことがユニークでした。通常はマイナビ、リクナビからエントリーして、「会社説明会→書類審査→筆記・面接」と進むわけです。が、この会社は、採用の入口を複数にした。「せんべいの好きな人」「新潟が好きな人」「スカイプ面接」「会場を自分で設定できる面接」などなど。ホテルのカフェテリアのように、自分に合った(好きな)スタイルでエントリーできる方式(カフェテリア方式)にしたんです。そうすることによって、多様な人材を見ようとしたわけです。採用が「優秀さ」を創っているとも言えます。その結果、国公立・有名私立大学卒の応募が増え、その名を全国に広めました。

――有名企業でも工夫しているところがありますよね。

 意外に思われるかもしれませんが、ヤフージャパンでは、デジタルな手法だけでなく、すごく人間臭い手段も使っています。面接の回数を決めてないんですね。求職者が納得いくまで面接をする。通常、面接は「現場→部課長クラス→役員」と進んで内定者を決定しますが、ここでは、最終的に採用担当者面接を経てそこで内定を出します。つまり役員面接でNGでも採用というケースがあるんです。なぜかといえば、「落としてはいけない人材をいかに救うか」に最大の注意を払っているからです。

――採用が社員を変え、社員が会社を変え、会社が変われば業績も変わるとも書いてあります。

 優秀な学生を採ろう、コミュニケーション力のある、主体性のある人材を採ろう、じゃいけないんです。もう一歩踏み込んで、「うちの会社にとって『優秀』とは何なのか?」「うちの社にとってのコミュニケーション力とは何か?」「うちの社にとって主体性とは何か?」と発想すべきなんです。A社にとっての優秀さは、B社にとっての優秀さとはちがうはずですから。そう考えれば、採用方法も独自に考えられるはずなんです。

――この本は、当然ながら採用に携わる人が手にするでしょうが、就活する学生も読むといいですね。「自分が本当に何をしたいか」考えるいいきっかけになるでしょうから。

 それと、経営者の方々ですね。採用を変革しているほとんどの企業では、経営者がそれを理解し、採用担当者にある程度の権限を与え、資金をかけているからです。「採用」最前線が今とても熱いことを感じとってほしいですね。

新潮社 波
2016年6月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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